その日の放課後の出来事だ。
図書委員の仕事を終わらせた僕は教室にまた忘れ物をしてしまったから急いで教室に戻る。

急ぐ理由は早く帰って麦に連絡したいから。
今からでも携帯電話を使えば麦に連絡出来るのだけど、何故だかお姉ちゃんが側にいてほしい。

少し不安な気持ちがあるから、『隣に誰かがいてくれないと、まともに麦と話せない』と思ったから。

僕の頭の中は麦一色に染まって、彼の表情が脳裏から離れなかった。
早く話して、出来れば冬休み辺りにまた一緒に遊びたい。

そんな妄想を考えながら、僕は教室の扉を開ける。
僕の嫌いな夕日に染まる教室には、いつもと変わらない風景が待っていた。

それは特定の人への悪口。
生きている人を馬鹿にするような、意味のない落書き。

見飽きたと言うのが本音の黒板の落書き。
でも・・・・いつもと違う。
その黒板の落書きを見た僕だったけど、何かが違う。

同時に何故だか吐き気を覚えた。
目の前の意味の分からない言葉に、僕はまたてしても頭をかち割られたような頭痛に襲われた。

そう・・・・あの時と同じ。
麦や瑞季がいじめられるようになったあの日と同じ・・・・。