一方で変わっていないのは瑠璃の方だ。
変わっていないから、幼稚な瑠璃だから『僕をいじめる』と言う幼稚な発想が生まれたのだろう。

と言うか、いじめても何にも意味ないのに。

でもやっぱり、それで瑠璃を責めるつもりはない。
変われないなら、『誰か』が手を差し出したらいいだけ。

その『誰か』がいないなら僕は喜んで手をあげる。
麦が僕に教えてくれたように、今度は僕が瑠璃に教えたい。

今度は『悪のため』に行動するのじゃなくて、瑠璃と一緒に『正義のため』に行動したい。
人を信じることがまだ出来ないけど、困っている人がいたら僕は助ける。
それが山村小緑という不良少女だ。

僕はまだまだ成長し続けるんだ。

『人は変わろうとする意識があれば変われる』って、茜さんが教えてくれたように・・・・。

「寒いし教室戻ろ。麦には僕から連絡してみるから」

砂田はまた無愛想ないつもの砂田に戻っていた。
そして僕の声に小さく頷いていた。

そんな砂田に、僕は少し顔を赤く染めてお礼を言う・・・。

「あと、ありがとう。瑠璃も喜ぶと思う。こんなに瑠璃の事を考えてくれる人なんて、他にはいないよ」

その時、ふとお姉ちゃんの顔が僕の脳裏に浮かんだ。

最近のお姉ちゃんはいつも僕にベッタリだ。
どこに行くのも付いてくるし、よく僕の部屋に来るようになった。

あと風呂まで一緒に入ろうなんて言ってくるし。変なお姉ちゃんだ。

でもそれは僕を心配してくれているから。
僕がいじめられていると知ってから、お姉ちゃんは僕の事を必要以上に気にかけてくれた。

それだけで十分にお腹がいっぱいだというのに、茜さんや橙磨さん達も巻き込んで心配してくれて僕は幸福者だと思った。

だからそのみんなの優しさを、僕は瑠璃に伝えたい。

・・・・・。

でも、『現実はそう上手く行かない』と、神様は教えてくれる・・・・・。