小学五年生の運動会の一週間前、僕は瑠璃と一緒にスーパーで万引きをしたことがある。
生まれて初めての犯罪行為に心臓が口から出そうな勢いだったけど、万引きは成功した。

今になって思ったらただの馬鹿な行動だと思うけど、その頃はそれを『凄いこと』だと思っていた。
周りに自慢したかった。

だから親友の麦に自慢した。

そしたら本気で怒られた。
『今すぐ返してこい』って。

正直言って、麦も喜んでくれると思った。
『タダでお菓子が手に入るんだよ』って言ったら、目を輝かせてくれると思ったのに・・・・・・。

当たり前の麦の言葉に、僕は麦の事が嫌いになりかけた。

だって、いきなり怒ってきたんだもん。
『僕らの行動は正義だ』って思っていたら、『その行動は本当は悪の行動なんだ』って言われたから。

そして僕は思った。

『麦は僕らの事が嫌いになったんじゃないか?』って。
僕は不安になった。

よく僕らを注意するけど、本気で怒ってくるなんて今までに無かったから。
不安で押し潰されそうになった。

結局、僕と瑠璃は何事もなく商品を棚に戻した。
店には謝らず、最初から万引きなんて無かったかのように。

十分な営業妨害で犯罪行為だというに、僕らはスーパーを後にした。

そして『商品を返してきた』と麦に伝えたら、麦は喜んでいた。

同時にまた説教を喰らった。

怒った表情では無かったけど、『僕らが盗んだ商品をお金にして、生活をしている人も居るんだ』って小学四年生の同い年の男の子に言われた。

らしくない言葉だったけど、実際にその通りだと思って僕は変わろうと決意したことがある。

でも、それが何?
そんなの当たり前の行動じゃん。

犯罪行為に手を染めたんだよ。
怒られたら『変わろう』と思うのが普通じゃん。

それが僕をいじめた理由だったら、本当に馬鹿らしいじゃん。

「まさか瑠璃が僕をいじめる理由って、運動会じゃなくて万引きが原因?麦に怒られて、変わろうとした僕に腹が立ったの?」

馬鹿らしいから、信じられなかった。
僕の開いた口が塞がらなかった。

だって、僕の言葉に砂田は小さく頷いているから。