立ち入り禁止区域の屋上はいつも通り鍵が掛かっているけど、小銭があればこじ開けれる。
鍵穴の窪みに小銭を当てて時計回りに回せば、簡単に空くことが出来る。

当たり前だが、立ち入り禁止区域の屋上には他の生徒はいない。
この場には僕と砂田の二人だけ。そして瑠璃の姿も見当たらない。

また屋上で僕を待っているのかと思ったけど、瑠璃の姿はどこにもなかった。

隠れる場所もないし、本当に瑠璃はこの場には居ないようだ。

だから目の前には砂田だけ。
瑠璃はいないから少しは安心したけど、正直言って滅茶苦茶怖かった。

だってこれからの事が想像つかないし。
瑠璃の隣にいつもいる砂田だから、彼のことはある程度分かっているつもりだけど、今は全く分からない。

いつも通りの無愛想で死んだ魚のような目を見せているけど、今はただ怖い。

「何?何のよう?」

僕は動揺しているが、強気な気持ちでそれを押し殺した。
いつも瑠璃と喧嘩するときに見せる強気な表情。

一応逃げる準備は出来ている。
というか、何かあったらすぐに扉に向かうつもりだ。

『さあ、なんとでも来い』そんな強気の気持ちで構えたが、返ってきた砂田の言葉に僕はすぐに力が抜けてしまった。

「金子麦」

「は?」

「調べておいた。瑠璃が好きな相手」

「え?」

なんで今になってその名前が出てくるのか、僕は全く理解できなかった。
理解できないから僕は唖然と口を開けて驚いていた。

金子麦(カネコ ムギ)。
それは僕の大切な親友の名前。

真面目で正義感が強くて、誰にでも優しい男の子。
いじめられている僕を助けようとしてくれた僕の大切な人。

そして自分もいじめられて転校してしまったもう会えないと思った僕の親友。

麦と砂田はあまり接点がない。
強いて言うなら同じ小学校だった。

でもクラスは違った。

だからこそ僕は驚いた。
『なんで砂田の口から僕と瑠璃の友達の名前が出てくるんだ』って。

砂田は僕の知りたい情報を語ってくれる。