ルビコン

「ねえ小緑さん」

「なに?」

「明後日『赤崎祭一日目』だから、明日の夜に決起集会みたいなのするらしいのだけど、小緑さんも来る?」

「場所は?」

「美憂さんのカフェだよ」

「好きだねそこ。行くけど」

僕はため息を吐いた。
何かある度に、口を開けば城崎さんのカフェ。

まるでみんなのアジトのようだ。

今は昼休み。
また非常階段にでも隠れてゲームをしようかと思ったけど、最近はずっと瑞季と話している。

もう今の僕には、『暇潰しの一人でやるゲームなんていらない』と言われているように感じさせられる。

目の前の少年は若槻瑞季。
女の子みたいな可愛らしい表情の彼は最近明るい。

『お母さんが目を覚ました』って、本当に心の底から喜んでいる。
本当に笑顔が絶えない。

あまり人と話すのが好きじゃない僕は、瑞季と話す会話のネタなんて思い付かない。
『マーロン』のことなら何でも話せるけど、それ以外はさっぱり分からない。

だから瑞季がいつも話のネタを作ってくれる。
お互いまだ人と話すことに慣れていなくて言葉足らずだからか、話が噛み合わない時も多い。

でも『それはそれで面白かったりするからいいかな?』って思う自分もいる。

そんな僕と瑞季が会話している最中、僕がよく知っている大柄な少年が近くに寄ってきた。
死んだ魚のような、無愛想な奴。

「山村、話がある。屋上に来い」

成人のような低い声に、僕はすぐに気を張った。
まるで瑠璃を警戒する時のように・・・・・。

目の前の大柄な少年は砂田恵介だった。
瑠璃の指示かないと、何も出来ないロボットのような奴。

僕は無言で立ち上がり、先を行く砂田の後を追いかける。
瑞季は嫌な予感がしたのか、少し慌てたような表情を浮かべていた。

そして僕を止めようしたけど、それを僕が拒んだ。
『大丈夫だ』って。

僕は瑞季を安心させるように、彼に笑顔を見せた。

本当は滅茶苦茶怖いけど・・・・・・・。