ジジイが家にやって来てから、親が知らない人と入れ替わった気がした。
何をしても怒らないし、意味もわからずに僕を褒めてくれる。

それが何て言うか、気持ち悪かった。
これはジジイの影響なのだろうか。

同時に僕の学校生活も大きく変わった。
今まで僕のことを無視してた学校側も、ようやく僕と瑠璃の関係を知った。

どうやらお姉ちゃんがジジイに事情を説明して、ジジイが僕の頼りない親の代わりに学校に訴えたらしい。

結果的に学校側の教員はクラスの闇を一つずつ紐ほどくように、クラスメイト全員に事情聴取を行った。

そして僕が瑠璃から攻撃を受けたら、クラスメイトはすぐに先生に連絡してくれるようになった。
前と比べて、大村瑠璃(オオムラ ルリ)が攻撃をしてくる回数はかなり減った気がする。

瑠璃と常に彼女の隣にいる砂田恵介(スナダ ケイスケ)は、放課後に生徒指導部長と烏羽先生から面談を行っていた。

『真面目なことを話さないと帰さない』と生徒指導部長の先生は言うけど、『大村と砂田は何一つ答えてくれない』って呆れた表情で烏羽先生は僕に話してくれた。

その話を聞く限りでは、先生達も苦戦しているようだった。

本当にジジイが家に来てから、僕の身の回りが大きく変わった。
お姉ちゃんも相変わらず僕から離れないし。

たった一人の存在で、こんなにも状況は変わるものなのだろうか。
お姉ちゃんがジジイに相談してくれなかったら、僕はまだ瑠璃からいじめられていたのだろうか。

正直言って、良いことばかりだ。
辛かった学校も少しはマシになって、僕も少しは気が晴れた。

ほんの少しだけど、僕は元気になった気もする。

相変わらず僕はクラスメイトから孤立して、『空気みたいな存在』だったけど、それはそれでよかった。
やっぱり人って苦手だし・・・・。

同時に変わった人もいる。
僕の身の回りで見間違えたと思わされる人がいる。

それは同じクラスの若槻瑞季(ワカツキ ミズキ)のこと。
今まで全然話したことなかったのに、僕に積極的に声をかけてくるようになった。

まるで『本当の友達』のように。