「学校は何もしていないみたいだけど」

「なら任しなさい。そのための親だ、紗季が両親に話さないのは、自分の親のことが嫌いだからだろ?だったらそれ、じいちゃんでもいいだろ?じいちゃんが学校に相談してもいいだろ?」

当てられて何も言い返せなかった。
『貴方が愛を込めて育てた息子が死ぬほど嫌いなんです』なんて言えるわけがないし。

でも嬉しかった。
それも心の底から。

初めて『心の底から頼ってもいい』と言われているような家族が現れて・・・・・。

私は情けなく、再び涙を流していた。

今日何回泣いただろうか。

まだまだ子供だな私・・・・。

「昔から泣き虫だな、紗季は。赤ん坊の頃は毎日泣いていたな。もしかして、今もよく泣いてるのか?」

祖父の意地悪な言葉に、私はすぐに反論した。

「そんなことない!それにこっちゃんの前では泣けないし」

「どうしてだ?」

『どうしてだ?』って言われてすぐに答えが思い付くかと思ったけど、頭の中が真っ白になって何も浮かばなかった。

それを見越してなのか、祖父はまた私を優しく包んでくれる。

「紗季はお姉ちゃんを越えてお母さんになろうとしているんじゃないか?まだ高校三年生だろ?色々人生を考えさせられたと思うが、もっと気楽に生きてみなさい。ガチガチの人生じゃ、何も楽しくないぞ。長生きしているジジイが言うのだから間違いない」

この人はなんで私の心をいとも簡単に読んでくるのだろうか?
まだ出会って数時間しか経っていないのに。

おじいちゃんには『今の私』はどう写っているのだろうか?
本当に『祖父』という言葉では片付けられないほどのすごい人だ。

・・・・・・。

おじいちゃんだったら、信じられる私がいる。

「おじいちゃん!ありがとう!」

目の下を赤く染めて、私は祖父に笑顔を見せた。
『もう大丈夫だ』と、『これからも頑張るよ』って言っているような表情を祖父に見せた。

私は自分の部屋を飛び出して小緑の部屋を開ける。
『ノックしろ』なんて言って小緑は怒っているが、そんなのどうでもいいと思った。

そして小緑がいつもやっているマーロンを横で応援しながら、小緑の側に居ることした。
お風呂に入ることすら忘れて、気が付いたら日付が変わるまで二人で騒いでいた。

怒っていたはずの小緑も、いつの間にか笑顔に戻っていた。
よく笑って、また怒って、ゲームをクリアして喜んで忙しそうだった。

私も嬉しかった。
『小緑と一緒の時間が楽しい』というのもあるけど、何より小緑がこんな楽しそうな表情を見せてくれることが一番嬉しかった。

これも全て、突然現れたおじいちゃんのお陰だ。

同時におじいちゃんに言われた通り、『私、山村紗季にしか出来ない事をもっと頑張ろう』と思った。

もちろんそれが何なのか考えた上でね。

そして『明日も学校』だというのに、気が付いたら制服のままで小緑の部屋で寝ていた。

一緒のベットで妹と仲良く寝ていた。

『これからも一緒だよ』って、寝言を呟きながら・・・・。