「その・・・・実は小緑が学校でいじめられていて・・・・」

その私の言葉に、祖父はすぐに怒った表情を見せる。

「なに?それは本当か?だったら早く学校に連絡しないと!」

「あーえっと・・・・おじいちゃん!」

祖父は立ち上がって怒りを露にしたけど、私の言葉で再び冷静になった。

「んで、どうして小緑はいじめられているんだ」

そう私に問い掛ける祖父は、さっき両親を怒っていた時のように怖い表情を浮かべた。
その表情が正直恐かったから、私は祖父から目を逸らしてしまう・・・・。

でも私は負けずと、小緑の過去を吐き出すように語った。

「二年前、こっちゃんが運動会で転けてしまって。それでクラスから酷い悪口や嫌がらせを受けていたのだけど、こっちゃんの友達が助けてくれたの。でも今度はその友達がいじめられて転校してしまって・・・・。犯人は見つかって解決したのだけど、転校した友達のことが好きだった女の子が小緑をいじめるようになて・・・・・」

「どうしてだ?」

「『こっちゃんが運動会で転けなかったら、転校なんてしなかった』って。『小緑がもっとしっかりしていれば、そもそもいじめなんてなかった』って・・・・」

祖父は何かを考えながら、小さく二度頷いた。

私も頑張って続ける・・・・・。

「そこからまた小緑へのいじめが始まって、中学生になっても変わらなくて。最近は小緑を助けようとした男の子もいじめられるようになって・・・・。最近は『学校に行きたくない』なんて小緑は言っていて・・・・・・」

気がついたら私は辛くて、涙を流して泣いていた。

小説のような作り話にも思えるけど、今私が口にした話は全て小緑が経験した事実。
こんな事実を、私の妹が受けている。

口にするだけで辛いのに、経験する小緑はもっと辛いのだろうと思った。

「私、こっちゃんを助けようとしたいけど、何も出来なくて。『こっちゃんを怒らせること』しか出来なくて・・・・・。私、悔しくて『こっちゃんをいじめる奴を八つ裂きにしてやりたい』と思ったけど、こっちゃんがそれを望んでいない。それに私、最低なお姉ちゃんだ。みんなによく助けを求められるけど、一番大事な人を助けてあげられない。辛いと言う人をただ見ているだけしか出来なくて、本当に悔しい・・・・・・」

茜ちゃんの件もそうだ。
結局、私は何も茜ちゃんの力になってあげれていない。

辛い過去と向き合っていると言うのに、まるで他人事のように思って何もしていない。

・・・・・。

「紗季、顔を上げなさい」

その祖父の声に私は気がついた。

まだ着替えていない制服のスカートに私の涙が落ちていた。
そして私はそのシミになりそうな涙を見つめていた。

『顔を上げろ』なんて言われても、無理・・・・。

「話はだいたいわかった。小緑と紗季が辛いと言うことは痛いほどわかった」

険しい表情から一転、祖父は私の頭を撫でてくれると同時に、再び優しい表情で言葉を続ける。