私の祖父の名前は山村兆治(ヤマムラ チョウジ)。
今年で七十五歳のおじいちゃんだ。

そんなおじいちゃんは何の前触れもなく、突然今日からこの家で暮らすことになったみたい。
『老後は孫と一緒に過ごしたい』って笑って話してくれた。

怖そうな顔だけど、とにかく面白い。
明るくて、我が家を光を照らしてくれる太陽のような人だった。

これで山村家も少しは変わるのだろうか。

今日の晩御飯は祖父が買ってきたコロッケ。
評判通り本当に美味しかったけど、食欲のなかった私はすぐに部屋に戻った。

ただ一人になりたかった。
私はベッドで横になりながら天井を見ていた。

『城崎さんのカフェに行こうかな』って思ったけど、何か違う気がしてやめた。

そんな中、部屋をノックする音が聴こえた。
『小緑かな?』って思ったけど、小緑はいつもノックせずに部屋に入ってくるし。

だから『もしかしておじいちゃんだろうか?』と思いながら、身体を起き上がると同時に私は返事を返した。

「はーい」

「紗季、ワシだ。入っていいかな?少し話をしよう」

「う、うん!どうぞ」

入ってきたのはやっぱり祖父だった。
白髪ではなく、歳を感じさせないフサフサの黒い髪。

元気なおじいさんだ。
体も鍛えているのか、体格もプロレスラー並みにいい。

祖父は『座るぞ』と言う言葉と同時に、私の座るベットに腰掛けた。

そして私に問い掛ける。

「どうした紗季。コロッケ美味しくなかったか?あんまり食べなかったが。元気もないぞ」

「いやその・・・・。お腹の調子がよくないって言うか・・・・」

私の言葉に、祖父は何も言葉を返さなかった。
でもその代わり、少し睨まれたような気がした。

優しそうな表情だけど、『どうして嘘をつくんだ?』って言われているような気がして・・・・。

「ごめんなさい。嘘です。悩み事を、抱えていて・・・・」

逃げられないと思った私は『本当の事』を話す。
そして『本当の事』を言ったら、祖父は優しい笑顔を見せてくれた。

「ほお。なんだ?じいちゃんに話してくれんか?」

私は躊躇った。
ってか躊躇う必要なんてもうないのに。

なんでまた意地を張ろうとするんだろう・・・・。

・・・・・。

少し間を置いてから、私は覚悟を決めた。

『おじいちゃんには味方になって欲しい』って信じながら・・・・。