「こっちゃん、謝ることも大事だよ。自分が悪くなくても、『迷惑をかけているかもしれない』って思うなら謝らないと」

「うるさい。僕は悪くない。勝手に向こうからぶつかってきただけ」

「だからこそだよ。ぶつかったしまった時点で、自分も悪いかもしれないのに」

「さきねぇ、それいじめられている人に向かっても言えるの?」

「えっ?」

小緑の言葉は槍のように私の心に突き刺さった。
何て言うか、今の小緑に一番言ってはいけない言葉を言ってしまったような気がしたから・・・・。

小緑は怒った表情で続ける・・・。

「僕、瑠璃にいじめられているけど、それは『僕が悪い』ってこと?僕のせいで授業を中断させているから、みんなに謝らなければいけないの?被害者の僕がクラスメイトに謝らなければいけないの?」

「そ、それは」

「いい加減なこと言うのはもうやめて。だからお姉ちゃんはいつもみんなに舐められるんだよ。『クラスの委員長やっている』って言うけど、本当はクラスのみんなから嫌な仕事を押し付けられただけじゃないの?『さきねぇなら大丈夫だ』って。『クソみたいな仕事なら、山村紗季にやらしておけ』って」

「そ、そんなことは・・・・・」

「舐められているよ!そんな人に『間違っている』とか言われたくない!さきねぇなんて大嫌い!」

商店街にいる人が全員振り替えるほどの大きな声で小緑はそう言った。

同時にどこかに走って行った。
私も追いかけなきゃって思ったけど・・・・。


『妹に姉失格のレッテルを貼られてた今の私に、そんな資格があるのか』って、そんなことを考えてしまった。

何より今の小緑に嫌われたことが一番ショックだった。
私しかこっちゃんを守ってあげる人がいないのに。

『早くこっちゃんの家族に認めてもらわないと』って言ったのに・・・・。

・・・・・・・。

何もかも失った私は、ただ商店街をさ迷った。
まるで野良猫のように。

遅くなっても、誰も迎えに来てくれない寂しさに襲われながら・・・・。