ルビコン

「こっちゃん!」

昔からそうだった。
親に似たのか、小緑は血の気も多い。

喧嘩と感じたら、誰が相手でも小緑はすぐに相手を睨む。

「すいません!こらっ、こっちゃん!」

そしてこんな風に、私がすぐに相手に謝る。
こんなやり取り、何百回繰り返してきただろうか。

一方のおじいさんは苦笑い。

「すまない。電話に慣れなくてな。 許してくれ」

「クソジジイ」

その小緑の暴言に、私はおじいさんに拳銃で胸を撃たれたような気分になった。

「こら、小緑!すいません!本当にすいません!」

きっと心の声が出てしまったのだろう。
そう勝手に解釈して、私は目の前のおじいさんに何度も頭を下げた。

その滑稽な姉の様子を、小緑は冷たい目で私を見ていた。

でもおじいさんは笑っていた。
まるで東雲さんのように優しい笑顔を見せていた。

「元気な子だな。いいことだ」

そう言っておじいさんは大きな笑い声と共にどこかに去っていった。
誰かに電話することを忘れていて、少し変わった人だと私は思った。

ってそんなことより小緑を叱らないと。

「こら!こっちゃん!なんでそんなこと言うのさ!」

小緑は相変わらず不機嫌だった。
私を睨み付けて、怒りを露にする。

「僕の邪魔をした。あのクソジジイ、調子に乗っているから」

「調子に乗るって・・・・。誰だって間違いやミスはあるでしょ?」

「僕は天才だから。ダンスも褒められてばっかだし、間違えたことながないの」

人生は明らかに間違った方向に進んでいるのに、何を言っているんだろうかこっちゃんは。

私は大きなため息を一つ吐いた。
まるで出来の悪い娘を持ったようなお母さんのような気分。

きっと今この子に何を言っても無駄なんだろう。

誰の言葉も信じたくないのだろう。

本当に困ったものだ。

でもそれで小緑を見捨てて良い理由にはならない。
言うこと聞かないなら、私が小緑に教えないと。

それにもう中学生なんだし。