「茜は馬鹿じゃないよ」

また慰めてもらって、情けない自分に涙が出そうだった。

橙磨さんも樹々に続く。
「そうだね。馬鹿って言うのは勉強出来ない人のこと。松川さん確か成績悪かったよね?」

「ちょっ、川島さん!それひどいですよ!」

橙磨さんと樹々は笑っていた。
きっと橙磨さんは私を励まそうとして、樹々をからかったのだろう。

でも私は上手く笑えない。
気を使ってくれたのに、また迷惑を掛けてしまったと後悔しまう私がいる。

また暗い顔を浮かべる元の私に戻ってしまう。

そんな残念な私に、橙磨さんがアドバイス。
「良いことをしてそれを『馬鹿だ』と例えたら、正義のヒーローなんて誰もやらないよ。もっと誇らしく、堂々と生きなよ。じゃないと、ずっと過去の自分に縛られて生きていかなければならないし。その方がずっと馬鹿な生き方だと思うよ」

橙磨さんの優しい言葉の後、私の元に一匹の猫が近寄ってきた。
その猫とはさっき石を投げられて鳴いていた小さな白い猫だった。

赤く血が滲んで痛々しい姿だけど、子猫は元気そうだった。

子猫は私の顔を見て、可愛らしく鳴いた。
まるで、『ありがとう』と言われているような気がして。

背中を押された気がして。
私はまた大粒の涙を流していた。
情けなく猫の鳴き声の聞こえる早朝の空に混じって、私の泣き声が響いた。

「一歩前進だね。僕もようやく友達が出来たし。結構辛かったんだよ」

「あたしも前進かな。茜の泣き顔なんて初めて見たから。今日からそれをネタに茜をいじめられる」

「樹々うるさい!」

二人の言葉を下記消すように私は叫んだ。

早朝の綺麗な太陽に向かって、新しい自分らしく大きな声で私は叫ぶ。

『みんなと一緒なら私も一歩前進出来るかな?』って、自分に問いかけながら私は前に進んだ。

『勇気を出したら、それはいつか自分のためになるのかな?』って。

そんなことを思いました・・・・。