ルビコン

我が山村家の家族は父と母、そして私と小緑の四人暮らし。
父方の祖母は私が中学一年生の時に亡くなって、祖父はわからない。

母方の祖父祖母も私は知らない。
親戚も従兄弟も、あまり詳しいことは知らない。

親が親族と話している所なんて、見たことがない。

そう思ったら『私達、孤立しているな』って思った。
正月や盆もいつも家族だけで暮らしいているし。

同時に思った。
『小緑の事を相談する相手がいない』ってことに。

城崎さんや東雲さん、そして私の親友には相談したけど、『みんなも悩んでいる』って言うか。
解決にはまだ程遠いと言うか。

そもそも小緑が心を開いている相手って殆どいないし。
強いて言うなら、茜ちゃんや樹々ちゃんや橙磨くんぐらいだし。

小緑がもっと本音を言ってくれないと、私達もどうすることも出来ないと言うか・・・・・・。

・・・・・・。

私、考えすぎなのかな?
そりゃ小緑を救う方法ならいくらでもあると思う。

小緑をいじめる相手を取っ捕まえて、『二度とするな』とぶん殴るとか。
小緑を転校させて環境を変えさせるとか。

出来ることは山ほどある。

でも、それをこっちゃんは望んでいるのだろうか。
それが『こっちゃんがやりたいこと』なんだろうか。

それに小緑は言った。
『瑠璃とまた仲良くしたい』って。

それが小緑の望みなら、そうするべきだと私は思う。
小緑の力になるべきになるように、私がもっと小緑の力になって頑張ったらいいのだと思う。

でもそれ、難しくないかな?
元々『親友』だったと言っても、『自分をいじめる相手と復縁する』って辛くないのかな?

もし復縁出来たとしても、お互いの顔を見ることが出来るのだろうか。
『偽りの友達』なんて言われないのだろうか。

って、私が考えても仕方ないか。
それがこっちゃんが望んでいることだし。

私がどうこう言っても意味ないし。
こっちゃんなら、私の言うこと聞かないだろうし。

そう言えば茜ちゃんもそうだった。

『自分をいじめた親友と、また仲良くなりたい』って言っていた。
本当に強い子だと思わされる。

それにこの前も茜ちゃんは親友と話していた。
確か橙磨くんが草野球に呼ばれていたあの日。

隣で茜ちゃんの会話を聞いていたけど、表情はとても笑っていた。

そしてそれはあまり見たことない表情だった。
怒ったり泣いたり。昔から茜ちゃんをよく知る私から見たら、まるで知らない人が桑原茜が演じているようにも見えた。

それが本当の桑原茜だと言うのに。

茜ちゃんは間違いなく変わった。
同時にもっともっと変わろうとしている。

これから先も、茜ちゃんはどんどん成長するだろう。

小緑も茜ちゃんを見習えとは言わない。
小緑は充分頑張っている。

頑張っている人間にそれ以上は求めない。

ただ小緑に必要なのは仲間だけ。
自分の話をしっかり聞いてくれる人だけ。

それだけだと、私は思う・・・・・。