「よし、今日は愛藍くんの奢りでいっぱい食べちゃうかな」

「なんでそうなるかな?あーくっそ!」

その時、ずっと隣に居る草太と目が合う。
相手チームの選手はまだ勝利を分かち合っているのか、帰ろうとはしない。

「草太、お前も来いよ。楽しいからさ」

俺がそう言ったら、草太は驚いていた。
次に少し迷ったような顔を見せたら、彼は最後には笑った。

「はい!」

今日何度も聞いた草太の明るい声。

同時に考えさせられた。
『茜も草太も、たった数日で人はこんなにも変わるんだ』って言うことに。

そしてまた俺は、背中を押されたような気分になった。

「ってかなんで幽霊?なんで桜ちゃんは幽霊って聞いたら打ったの?」

橙磨さんの言葉に、俺は桜の打席を思い出す。
そういえば俺、そんなことを言ったんだったっけ。

「そりゃ、アイツが幼いときに一人でトイレに行けなかったからっすよ。『幽霊が怖い』とか言って、よく俺の布団の中に入って来ましたし」

俺がそう言ったら橙磨さんの表情が歪んだ。
意外な桜の一面に橙磨さんは驚いたのだろう。

「へ、へぇ。でもその話、他の人には言わない方がいいよ。もし僕以外の誰かに言ったら、愛藍くんの命はないかな」

橙磨の忠告に、俺は肩を落とした。

「ですよね・・・・」

そんなため息を一つ吐くと同時に今日と言う日が終わる。
楽しかった日々が終わる。

茜色の空が消えようとする・・・・。

この後の打ち上げに参加した俺だったが、終始みんなに弄られた俺は常に怒っていた。
挙げ句の果てに、マジで奢らされたし。

マジで俺をなんだと思っているんだ?

でもこのメンバーがいたから今日の新しい自分が生まれたのは事実。
お金で買えないものもあるけど、その打ち上げ代で茜と仲良くなれる言葉を聞けるなら、『まあいいか』って思う自分もいる。

同時に『明日からもっと頑張ろう』と思う自分がいる。

明るく前向きに物事を考える俺がいる。

そして俺は『幸せな人間なんだ』と、理解した。