「ねぇ、愛藍」

「なんだ?」

「今度さ、秋祭りがあるんだけど・・・よかったら来てくれない?私、屋台番任せられたから」

「屋台?そう言えば橙磨さんが言ってたな。茜の料理がゲロマズだって」

橙磨さんから屋台の話を聞いたけど、実は俺は最初から知っていた。
それは今朝葵に聞いたから。

葵の名前はあえて出さなかった。
理由は特にない。

「勝手に話盛らないでくれる?まあでも、実際そうなんだけどね」

隣から橙磨さんの声が聞こえた。
流石に怒られるかと思ったけど、橙磨さんはため息を一つ吐いていた。

どうやら俺の嘘は本当らしい。

「だってよ。橙磨さんの声、聞こえた?」

「聞こえたけど、もう愛藍には来てほしくない。来たら追い出す」

「悪かったって。ってかそれ俺の責任?」

そう言った俺は笑った。
そして俺の笑い声を聞いた茜から笑っているような声が聞こえた。

同時に茜が桜に似ていると思った。
茜も茜でなんでもかんでも俺の責任するし。

ってか俺、前世で悪いことしたのだろうか?
世界中の生き物から怨まれる事を犯したのだろうか。

それとも俺、みんなに好かれやすいタイプの人間なんだろうか?

・・・・・・。

まあ、今はそんな事はどうでもいい・・・。

今はやっぱり、伝えたいことはちゃんと伝えないと。

後悔だけはしたくない。