「なあ、元気か?何て言うか、前より声が明るいけど」

「そ、そうかな?」

「お前、結構友達いるんだな。桜もお前の事知っているって言うし、相手チームの向日葵っていう女の子もお前の名前を口にするし。有名人だな」

「有名人って、そんなことはないよ」

「そうか?人との関わりを避けていた茜の幼い頃と比べたら、大分変わったと思うけどな」

その言葉を言ったら、少し間が空いた。
多分茜俺の言葉に驚いているのだろう。

でも茜の言葉で会話はまた再び始まる。

「愛藍こそ変わったね。いいことあったの?」

「ねーよ。俺は相変わらず。つかお前、草太と仲良くしているのか?」

何かの作業をしている音は聞こえるけど、しばらく経っても茜の声は全く聞こえなかった。
俺の言葉に茜は無言になる。

それが何を意味するか俺はすぐに理解できて、ため息を一つ吐いた。

「あっ、草太が泣いた」

そうやって俺が言ったら、慌ただしい茜の声が聞こえた。

「だ、だってえっと・・・・・その!よ、用事が!」

「草太が僕のことは嫌いなんだ。だってよ」

「えっと、その・・・・」

「もう茜さんなんて大嫌いだってさ」

そう言えば昔、こうやって葵をからかっていたっけ。
俺と茜で、葵に嘘ついてからかっていた。

何でも信じる葵だったから、真面目な反応の葵を見て俺と茜は笑っていた。

まるで、今の茜があの頃の葵にそっくりだ。
全部嘘だというのに、茜はパニックに陥っているようだった。

俺の隣に居る草太は何がなんだか分からない顔を浮かべているし。
ってかあのとき、葵より茜をからかっていたら、茜はどんな反応をしただろうか。

こんな風に変な声を出すのだろうか。
それとも怒るのだろうか。

・・・・・・・・。

そう考えたら俺、『やり残したことっていっぱいあったんだ』と考えさせられた。
もっと茜と遊んでいたいと思った。

ホント後悔だらけ。

でも、もう後ろ向きに過去はとらえない。
前向きに、俺は自分の過去と犯した大罪に向き合う。

「バーカ、冗談だよ。草太は怒ってねぇよ。なんで本気になってやがる」

「だって、草太に悪いことしたって・・・・」


「悪いと思うならここに来るか?草太もいるし」

「えっ?」

「冗談だよバーカ」

「もう!いい加減にして!」

茜は怒った。
無表情だった昔と比べてみたら、再び色々と考えさせられた。

『こうやって茜も怒ったり泣いたりすんだな』って。

『茜と出会って何年も経つのに、そんなことも知らなかったんだ』って思ってしまった。

ちょっぴり悔しい・・・・・。