「ねぇ愛ちゃん。その愛ちゃんの言う好き人って、やっぱり茜ちゃん?」

「ああ。そうだ」

桜の言葉にそう答えて、俺は桜の言葉を思い出した。

コイツ今、『俺の事が好き』って・・・・・。

何て言うか、変なことを言ってしまったのだろうか。

「そう。そっか。なんか元気出てきた」

でもそう小さな笑顔を見せる桜を見て、俺は気のせいと言うことにして聞き流した。
そしたらいつものように背中を叩かれた。

っておい!

「今日は負けたから、一番活躍した選手が打ち上げの奢りね。今日のヒーローは愛ちゃんだから愛ちゃんの奢り!これ監督命令」

「いや、普通逆じゃね?つか俺一応最年少なんですけど。つか監督命令って怖い言葉を使うな」

「いいの。アンタみたいな不器用な男、金の使い道なんてないんだから。女にも興味なさそうだし」

まあ確かに。
女に興味がないと言ったら事実だ。

実際茜と桜以外の女はあまり異性として気にならないし。

つか納得できるか!

「うっせぇ!」

そう俺が怒ったら桜は笑った。
俺の反応が面白かったのだろうか。

桜は腹を抱えて笑い始めた。

本当に、マジで意味の分からないやつだ。

そんな中、相手のベンチから草太がやって来た。
試合に勝ったからか、あまり見たことのない嬉しそうな草太の表情に俺は少しだけ癒された。

『草太もガキらしく笑うんだな』って。

「愛藍さん!」

「おう、お疲れ。お前、野球やってたんだな。驚いたぜ。いい球投げてたし」

「そんなことないですよ!愛藍さんこそ、野球やってたんですか?」

「いや、ただ呼び出されただけ。まあ暇だったし、ちょうどいいかなって。草太は何で野球始めたんだ?」

俺の質問に、草太は笑みをこぼす。

「友達の向日葵ちゃんが野球に誘ってくれて」

「向日葵?」

聞いたことない名前を口にしたら、その向日葵と言う名前の女の子がこちらに向かって歩いてきていた。
草太の女房役の、今日のヒーローであるホームランを打った小さな女の子。

ってかよくよく考えたら、女子小学生でスタンド超えのホームランってマジでスゲーよな。
マジで将来男のに交じってプロ野球選手になっていそうだ。

女子選手でホームランを打てる選手は少ないっていうのに。