気が付いたら青い空は茜色の夕日に染まっていた。
熱戦だったから俺は気付かなかったんだろうか。

陽は彼方に消えようとしていた。

自分の荷物なんて殆どないないけど、俺達は荷物をまとめる。
一方で美空に慰めてもらう桜の姿を見て、俺は言葉を失っていた。

こんな時、なんて言葉をかけたらいいのだろうか。

「愛ちゃん」

そんな桜に声を掛けられた。
逆に気を使われている気がして、情けなく思った。

「どうした？足痛むか？」

「ううん。大丈夫。それよりまた負けちゃった。私のせいで負けちゃった」

その辛そうな、また泣き出しそうな桜の表情を見た俺は、慰めようと言葉を組み立てる。

「まあ俺の責任って言うか。俺が三振しなかったらどうにかなってたかもしれないのによ」

「そんなことないよ！愛ちゃんは頑張っていたよ！間違いなく、今日のMVPだよ！」

なんで俺が励まされているんだろうと思ったら、自分自身を殴りたいと思った。

普通逆だろ。
俺が桜を励まさないといけないのに。

「MVPは全員だ。好投で試合を作って、外野の守備ではダイビングキャッチで俺を助けてくれた美空。今日二回出塁して、影でみんなを支えてくれた橙磨さん。それに負けはしたけど、お前の名采配。他にもみんな活躍していた。俺だけを言うのは変だぜ」

そう言ってみんなを称えて自分を否定しても、何も生まれなかった。
桜は相変わらず泣きそうな辛い表情を見せている。

そんな桜と俺の耳に、美空の声が聞こえてくる。

「まあ確かに勝てなかったのは残念だね。勝てると思ったのにな。桜が先に一塁に到達していればな」

桜の隣に座る美空の言葉に、俺は違和感を感じた。

「いや美空。それはちょっと言い過ぎって言うか」

「だからこの苛立ちを愛藍くんで解消したら？好きなだけ殴ってもいいって言っているし」

「いや、言ってねぇし。っておい！」

どうして桜は俺を殴ることにこだわるのだろうか。
どんな状況でも桜はその言葉を聞くとすぐに行動に移す。

同時に俺への愚痴をこぼす。