樹々は答える。

「今日は病院だって。一応誘ったけど」

「そう」

私は冷たく言葉を返した。
嫉妬ではない。仕方がなかったからだ。

紗季は生まれ付き心臓が悪い。
薬で誤魔化しているが、入退院を繰り返す病弱な女の子だ。

私は小学生から紗季の事を知っているから、紗季の持病の事を知っている。
だけど樹々を除いたクラスメイトは、その事に気付いてない。

それとも、『知らない』と言った方が良いのだろうか。

誰に対しても笑顔を振り撒くその優しい表情に、クラスメイトは彼女が嘘を付いているなんて思わないだろう。

本人も言い触らしたくは無いようなので、現時点で知っているのは私と樹々、そして一部の教員達だけだ。

まあ今は紗季がこの場にはいないから、彼女の話をしても意味ないけど。

私は話を戻す。

「ってかそのカフェ会って何なの?私、詳しく聞いてないんだけど」

樹々の鞄にぶら下げている大きな熊のぬいぐるみが大きく揺れる。

そして樹々は楽しそうに、無邪気な表情を浮かべていた。

「隣町のシロさんって知ってる?」

「知らない」

樹々の質問に、私は即答だった。

そして案の定、樹々は怒りだす。

「なんで知らないのさ。白町カフェで有名なシロさんだよ!」

「いや、なんの説明にもなっていないよ」

私は横目で冷たい視線を樹々へ送ると、樹々は笑みを浮かべた。