川島ダーウィンズは一打サヨナラのチャンス。
左打席には四番の美空に変わって高校生のような女の子が立っていた。

名前は榎田桜。
このチームを指揮する無能監督だ。

棒立ちのような桜のバッティングフォーム。
きっと膝を曲げるだけで痛いのだろう。

スイングするだけで痛そうに桜は顔をしかめる。
高校三年の時、全国大会の陸上で再起不能の一生傷を桜は負ったって言っていた。

そんな俺達はフォアボール狙いの作戦に出た。

作戦と言っても、ただの運任せ。
相手が自滅するのを待つだけ。

それに桜ならストライクゾーンの高さは狭い。
詳しいことはよく知らないけど、確かストライクゾーンは肩と腰の中間地点から膝下までと聞いたことがある。

背の低い桜ならフォアボールは狙いやすいかもしれない。

そんな希望と絶望が入り交じる中の一球目。
相手が女だからか、それとも怪我していると相手知って当てないようにしようと動揺したのだろうか?

ボールはキャッチャーの頭を越えそうなほどのすっぽぬけ。

なんとかキャッチャーのとっさのジャンプでボールは後ろに逸れることは無かったけど、とりあえずボールカウントは一つ稼げた。

はずだっのに・・・・・。

まるで野球漫画に出てきそうな悪球打ち選手のように、彼女はストライクゾーンから遠く離れたボールをフルスイング。

もちろんボールはバットに当たることは無く、空振りとなってストライクが宣告された。

そしてベンチにいる俺達を不安にさせる・・・。