代打とは控えの選手が代わりに打席に立つこと。
試合に出ていない選手なら、代打として打席に立つことが出来る。

だけど、桜は俺の提案を否定する。

「はあ?ウチの選手は九人しかいないの。ベンチに誰か居たなら、最初から八人で守らないわよ!」

「まあ確かに」

そう言えば橙磨さんから、まだ謝罪の言葉を聞いていない。
試合終わったら絶対に殴ってやる。

でも今はそんなことはどうでもいい。
問題は今の打席をどうするか。

桜の焦りは更に増す。

「テキトーなこと言わないでよ!まさか今から誰か呼ぶ気?」

流石にそれは相手チームに申し訳ない。

あとアウト一つで勝利が見える場面で、その誰が来るまで待つなんて流石にあってはならないこと。
時間かかるだろうし。

だから俺はその言葉を否定する。

同時に投げやりな言葉を桜に言った。

「いや、つーか桜がいるじゃん。俺らのベンチには」

俺の言葉に案の定、桜は目を丸くして驚いていた。
そして俺に反論する。

「いや私、足怪我しているし。二度とスポーツ出来ない身体だし」

申し訳ない事を言ったのは事実。
桜の思い出したくない過去を言ったのは正直に謝る。

でも俺が言うのも変な話だけど、『こんなことで悩んでほしくない』と言うのが俺の本音。

『遊びだったらもっと遊んでもいいんじゃないか』って。

『別にバットを振らなくてもいいから、打席に立ことで意味あるんじゃないか』って。

俺に出来ること、提案できることと言ったらそれくらいだ。
桜が俺の案を否定するなら、俺は潔くチームの負けを認める。

俺はそう思っただけ。

というか、そう教えてくれたのは桜じゃねぇか。
草野球なんか急に始めて。

それも『ももちゃん』というやつの影響なのだろうか。

『楽しんだったらもっと楽しまないと』って今日桜から教えてもらったはずなんだけど。

俺は言葉を付け足す。