「まあいいや。あとはよろしくね。私、次の打席立てないから」

「えっ?」

桜は驚いた顔をしているがそりゃそうだろう。
美空はここまで橙磨さんに運ばれて、ベンチまで戻ってきた。

というかこれ、遊びだろ?
遊びに力入れすぎだろ。

なんでここまで彼女達は本気になれるんだろうか?
俺にはまだその意味がよくわからない。

「というわけで、愛藍くんはホームラン打ってね。私が『劇的なサヨナラホームラン』っていうストーリーでもよかったけど無理だし。私に回すまでにしっかり決めてよね」

そう言って、俺のケツを美空は叩いた。
不意打ちの行動に俺は怒ろうかと思ったが、美空の『頑張れ』と言っているような笑顔を見たら、怒ることを忘れていた。

なんか結局、自分のことしか考えていない奴らばっかだな。

まあ、少し前までは俺もその一人だったけど。