「学校に事情を説明して、病院行く?」

「あっえっと、大丈夫です。一応一年から皆勤なんで」

私は彼から目を反らした。『同じクラスメイトなのに何を緊張しているんだろう』と、恥ずかしく思う。
昨日のカフェ会で多少の人見知りの克服は出来たと思ったが甘かった。

私は目の前の男子生徒を改めて確認。
線が細く小柄で大人びた雰囲気。

同じクラスメイトなのに年上にも見えるが、実際は年上。
経緯は知らないが、彼が留年生ということだけは知っている。

そしてこちらも誰かさんと一緒で、校則違反の茶髪にピアスといい加減に
着こなした制服。
一言で言えば『不良少年』にも見えるのだが、時々見せる笑みはまだ幼い少年を連想させた。

そんな彼に私は頭を下げる。
その動作するだけで体が痛むが今は我慢。

「あの、ありがとうございます。助けてくれて」

「無理しないで。礼なんていらないから、気にしないで」

男子生徒は一呼吸置くと続けた。

「あと君、同じクラスの桑原さんでしょ?敬語使われても困るし、年齢は違っても、同じ学年でクラスメイトなんだし」

彼の優しい言葉に私は戸惑った。
そんなことを言われても、敬語なしで喋れるわけがないし。

何より助けてくれたし。

だから再び言葉を失った私は彼から目を反らしてしまった。

一方の彼は私を見て微笑む。

「まあいっか。ゆっくりでいいから仲良くしていこうよ。実は僕、留年してて誰も友達いないから、いつも一人ぼっちなんだよね。なんて言うか、寂しいっていうか」

「留年、してるんですか?」

私は勇気を出して口を開いたが、彼は首を傾げた。

もしかして、聞いてはいけない質問だったかな?

地雷を踏んじゃった・・・・・かな?

・・・・・。

うう、どうしよう・・・・。