葵は震えたようなで言葉を返す。

「やめとくよ・・・・」

「でもな葵、そんなんじゃ逃げても」

「分かっている」

「だったら」

「わかってる。分かっているから、ちょっと黙ってて」

葵は電話をして来た時の、暗い声に戻る。

俺が悩んでいるの同時に、葵も悩んでいる。
その気持ちは俺も同じだから、痛いほど気持ちが分かる。

でも葵は俺よりも辛い思いをしている。
俺がどうこう言える立場じゃないけど、葵があんなことを言わなかったら約束通りずっと三人で居たかもしれない。

今回の原因を作ったのは葵だ。

「んじゃ、切るな。ありがとう愛藍」

だからこそ、俺は葵を助けたいと思った。
『葵の自業自得』と言われるかもしれない。

でもそんなふざけた理由で『親友』を見捨てていい理由にはならない。

茜も俺が絶対に助ける。
そしてまた三人で遊びたい。

俺はただ、あの頃のような日々に戻りたいだけ。

それが俺の今一番やりたいことだ。
それ以外は壊れても、戻れなくなったとしても何でもいい。

「また頑張ろうな、葵。また三人で絶対に遊ぼうぜ!」

そう言って俺は葵に元気を見せた。
明るい声で俺は答える。

葵の表情は分からないけど、葵が笑う姿が想像できた。

そして通話が切れる。

通話が終わっても、俺は携帯電話から視線を逸らさなかった。
通話の画面が消えて、画面は再び『桑原茜』の文字に戻る。

また悩まされる。

でもここで勇気を出さなかったら、俺は一生後悔したまま生き続けなければならない。
暗い人生を歩み続けなければならない。

そんなのは絶対に嫌だ。
まだ成人していないのに、毎日嫌なことばかり考えて生きたくない。

どうせなら楽しく生きたい。

だから俺は覚悟を固める。

『もうどうにでもなれ』と、そんな軽いのか重いのか分からない気持ちのまま、全ての感情を押し殺して、俺は電話の発信ボタンを押す。

・・・・・・。

だけどまた画面が変わってしまった。

「はあ?」

また着信の画面。
その相手は俺の天敵のような、大嫌いな相手だった・・・・。