ルビコン

茜に怒られた。
『二度と現れないで』って。

今まで見たことない泣きそうな顔で俺は茜に嫌われた。

直後、俺は『死にたい』思った。
『今すぐピアノも辞めようか』と考えた。

『なんのために頑張ってきたの』とか『自分は誰で、何者なんだ』って。

目の前が真っ暗になった。
本当に悔しかった。

コンクールで落ちた時や、自分の演奏を馬鹿にされた時より悔しかった。

そして今も悔しい。
同時に、自分が情けないと改めて思う。

この前の一件でまた茜と仲良くなったと思ったけど、『まだアイツに会わせる顔がない』のが俺の本音。
茜の存在に怯えているのが今の俺だ。

本当に馬鹿だといつも思わされる・・・・・・。

「んじゃ、ただそれだけ愛藍に伝えたかった。また今度な」

葵と電話していることを思い出した俺は電話を切ろうとしたが、ふとある言葉が脳裏に浮かんだ。

「ああ、後さ葵」

「なんだ?」

「その葵が言う秋祭り、やっぱり二人で茜に謝りにいかね?」

震えた声で俺は提案する。
一度は失敗したけど、チャンスが全て潰れた訳じゃない。

まだ茜に許してもらえないなら、また謝ればいいだけ。
それだけのことだ。

茜に『ウザい』と思われるかもしれない。
茜はまた嫌がるかもしれない。

けどそうしないと、絶対に俺達は前に進めない。
それだけは誰に何を言われようとも一番分かっているつもりだ。

と言うか、どう考えても俺らが悪いのに。
なんで茜は『自分が悪い』と言うんだ?

そこだけはマジで意味がわかんね。

まあでも、わからないからこそ、茜に嫌われたんだろうな・・・。