俺が中学生になった頃、どこのクラスを見渡しても桑原茜の名前は見つからなかった。
噂によると茜は俺達を避け、違う中学に通ったみたいだ。

そして『もう二度と会うことは無いのだろう』と俺は後悔した。
またあの頃のように戻りたくて、疎遠になるのを防ぐためにアイツをいじめたというのに。

結果は最悪だった・・・・。

まあよくよく考えたら、そうなるのが普通だと思うけど・・・・。

そのまま何事も進展なく長い月日が流れた。
しばらく茜と会えない日が続いたけど、俺の人生が大きく左右する一日が突然訪れる。

それはこの前の音楽祭の日だ。

音楽祭のゲストとして呼ばれた俺は、絶望に満ちたようなため息を吐きながら音楽祭のパンフレッドを手に取る。

『子供を相手にしたお遊び同然の祭りに、俺は何やっているんだろう』と思いながら、無意識にパンフレッドをページを捲っていく。
でもそんな中、お遊び同然の祭りなのに俺の脳が凍り付く。
音楽祭の参加者一覧が乗っているページを見て、消えかけていた記憶が蘇った。

俺は一人の演奏者に目を疑った。
大トリの最後の演奏者の名前は、俺がずっと会いたかった相手の名前と同じだった。

名前は『桑原茜』と言う女の名前・・・・。

俺は慌ててこの名前の人物を主催者に確認した。
懐かしい名前の人物を確認したら、そいつは俺が七年前に人生をドン底に叩き落とした女の子だと分かった。

俺の知らない間に茜はピアノを始めて、凄腕のピアニストになっていたみたいだ。
同じ業界に生きているはずなのに、俺は全く彼女の存在を知らなかった。

そしてそれを理解した俺は、息を飲んだ。

これはきっと、神様が遭えた俺への試練なんだろう。
『桑原茜から逃げるな』って、それを形にした神様からのメッセージ。

たぶん俺は前世でも悪いことをしていたのだろう。
それを更生できずに生まれ変わって、そのツケが回ってきたんだろう。

まるで神様から『いい加減人の心を持ちなさい』と怒られているような気がした。
なんて言うか、ある意味呪われている気がした。

まあでも、『祟り』とか『神様からの呪い』とかなら、俺はそれでいい。
逆に『神様はなんて本当にいい人なんだ』と称えたくなるくらい俺はそれでよかった。

ここで俺は更生できるなら、俺は何だってやる。
あの頃に戻れるなら何でもやる。

だって、『毎日どうやって茜に謝るか』って、それだけをずっと考えてきたんだ。
ピアノの練習よりずっと時間を使って・・・・・。

突然降ってきた『人生逆転のチャンス』に俺は全てを賭けた。
『勝負の時間だ』と『自分との闘いなんだ』って自分に言い聞かせながら、俺は一人休憩室にいる茜に声をかけた。

勇気を振り絞った。

・・・・・・・・・。

でも俺はしくじった。
チャンスをドフに捨ててしまった。