「樹々ちゃん、瑞季くん、向日葵ちゃん、聞いて!姉さん、杏子お母さんが目を覚ましたって!」

その言葉はもちろん、城崎さんの嬉しそうな、疲れがぶっ飛んだようなその表情と、無邪気な子供のような可愛らしく跳び跳ねる城崎さんの仕草に、その意味をみんなはすぐに理解した。

樹々さんは喜びを爆発させる。

「本当ですか!瑞季聞いた?お母さん、目覚ましたって!・・・・瑞季?」

崩れ落ちるように瑞季は泣き始めた。
溜まっていたものを全て吐き出すように、今度は瑞季が樹々さんの胸に飛び付いた。

それを見た僕は『なんだかみんな泣いてばっかだな』って泣きながら思った。

「東雲さん、子供達をお願いします。私の車貸しますので」

「はい。わかりました!」

東雲さんはいつもと表情は変わらない優しい表情だ。
でも声は明るかった。

だって東雲さんから見たら杏子さんはお嫁さんだし、『眠っていたお嫁さんが目を覚ました』って聞いたら、大人だって飛び付くように嬉しがるだろう。

さっきの城崎さんのように。
『早く行くよ』という樹々さんの言葉と共に、若槻家のみんなはカフェを飛び出した。

最後に『ごめんこっちゃん!また改めてお祝いするから!』って樹々さんから聞こえた気がするけど、僕は聞いていなかった。
まるで太陽のような眩しすぎる若槻家のみんなの笑顔に、僕は見とれていた。

そして僕の誕生日会は仕切り直し。