「誕生日だけは祝ってあげないと。小緑が生まれてきた記念の日だし。じゃないと死にたいとか、自分の事が嫌いになっちゃうでしょ。せっかく小緑が生まれてきたんだから、みんなで小緑の事を祝ってあげないと」

『私はそうやっていつもお姉ちゃんに励ましてくれたし』って最後に言った気がしたけど、また涙が堪えられなくなって僕は泣いた。

泣いたから上手く聞き取れなかった。

そんな僕をお姉ちゃんは笑う。

「もう、また泣く。でもいっか今日は。こっちゃん、頑張ってるからね」

その言葉を聞いた僕は無意識にお姉ちゃんに飛び付いた。
『ビックリした」』とかお姉ちゃんは言うけど、気にせず僕はお姉ちゃんの胸で泣き続けた。

まるで本当のお母さんようなお姉ちゃんに、『今日だけはお母さんの胸で泣いてもいいから』と言っているような気がした。

そしてさらに僕を友達が励ましてくれる。

「そうそう。最近こっちゃん頑張ってるもんね。瑞季の事も助けてくれたし。本当にありがとう。あたしも頑張らないと。あー、早く面接の結果届かないかな?」

「樹々ちゃんなら大丈夫でしょ?落ちてもどうにかなるし。ほら、樹々ちゃん明るいし。小緑ちゃんもそう思うでしょ?」

「橙磨さん!そんな理由で慰めないでよ!ってか落ちるとか言わないでください!」

樹々さんと橙磨さんの言葉に、瑞季は笑みを見せた。
『樹々お姉ちゃんなら大丈夫』って最後に言って、樹々お姉ちゃんを慰めていた。

そして再びみんなの視線は僕に移る・・・・。

「それじゃあ、こっちゃんの誕生日プレゼントでも渡そうかな。みんなで用意したから、一つしかないけど・・・・」

樹々さんは思い出したように自分のスクールバックを漁る。
そして白い袋を取り出した時、店内に一本の電話が鳴った。

城崎さんは自分の携帯電話を耳に当てる。

「はい、城崎です。はい、はい。えっ、本当ですか?嘘じゃないですよね?」
城崎さんの言葉にみんなが注目する。

予約の電話やクレームの電話では無さそうだ。
じゃあ一体なんだろうか?

そして通話を切った城崎さんの目には僕と同じものがあった。
城崎さんは慌ててそれを拭き取り、今日一番の大声で叫んだ。

それは僕も含めた、ここにいるみんなが喜ぶお知らせ・・・・。