ルビコン

どうしてお姉ちゃんは城崎さんのカフェに行くと言い出したのか。

どうしてお姉ちゃんは僕の携帯電話を鳴らし続けるのか。

どうして秋祭りの会議だと嘘をついたのか。

そして明日は学校と言うのに、夜遅くにみんな集まってくれたのか。

目の前の光景を見た僕は噛み締めるように、ここまでのみんなの行動に納得した。
同時に涙が止まらない。

「こっちゃんどうしたの?何かあった?泣くなんてこっちゃんらしくないよ」

「うるさい!」

元はと言えばさきねえのせいだ。
お姉ちゃんがみんなと仲良くするから。

いろんな人を紹介してくれるから、『僕は幸せ』なんだ。

「なんで?なんで、こんなことしてくれるの?今までしてくれなかったじゃん。どうして?紗季お姉ちゃん!」

そうだ。
こんなみんなに祝って貰えるこの十月十二日なんて十二年・・・・いや、十三年生きて初めてだ。

いつも誕生日なんて流されていたし。

誕生日ケーキなんて見たことない。

「それはそうだね。うーん、茜ちゃんが提案したから?」

「へっ?」

意外な名前に僕は変な声が出た。
一方の提案者は真っ赤な表情を浮かべて僕から目を逸らした。

僕は直ぐに茜さんの元に行って問い掛ける。

「茜さん、どうしてですか?」

「うーん。何となくじゃだめかな?」

「だめです」

僕の即答の声に、茜さんは再び目を逸らした。

と言うか茜さんって、こんなことを提案する人だったっけ?
すごく意外なんだけど。

そんな茜さんは教えてくれる。

「私のお兄ちゃん、毎年嫌でも私を祝ってくれたから。祝ってくれたらすごく嬉しい。それと・・・・」

茜さんはまた僕から目を逸らす。
本当にいつも自分に都合が悪くなると目を逸らす人だ。

でも『伝えたいこと』は、ちゃんと伝える人だ。