「で、これ何ですか?なんでみんな集まっているんですか?」

僕は最大の疑問をみんなにぶつけた。
夜遅くに、明日も学校だというのに意味が分からない。

「秋祭りの会議。メニューも決まったし、ちょうどいいかなって」

橙磨さんの言葉に、僕の疑問は消えない。
『じゃあなんで今日なんだ』と逆に疑問が増えた。
それに僕は前回の山村家で行われた会議には風邪で参加していない。

それなのに『僕の帰りを待つ』なんておかしくないだろうか。
僕がいなくても会議は進めるはずだ。

あとその屋台、僕は参加しないかもしれないのに。
『ダンスに出てくれ』と頼まれているのに。

疑問は結果的に消えなかったけど、話題は本当に来月の秋祭りの話題で盛り上がった。

茜さんの料理が上手になったとか、瑞季が色々料理を提案してくれたとか。
予算や原価率はどうするとか。

難しい話になると、僕はついていけなくなってしまった。

隣にいる橙磨さんと目が合う。

『風邪は治ったの?』と心配してくれる優しい声に僕は頷いた。
『でもまだ鼻声です』と言ったら、橙磨さんは『早く治そうね』って言ってくれた。

頼んだ料理が次々と運ばれる。

作ってくれたのは東雲さんだ。
本当にどれを食べても美味しい。

僕は食欲不振で給食はあまり食べなかったが、『食欲不振』という言葉を忘れてしまうほど僕の箸が止まらなかった。

でもそれはみんな同じ。
食欲旺盛の少年少女のために作られた料理は一瞬で無くなった。

料理が無くなったのを確認した城崎さんはお皿を下げると同時に茜さんを樹々さんを厨房に連れて行った。
『何だろう』と僕は考えるも、二人は全然帰ってこない。

その間、僕はお姉ちゃんに詰められて『本当は何をしていたのか』と再び聞かれた。
さっきの怒ったような表情ではなく、不安げに僕を心配するお姉ちゃんの横顔に、僕は『もう嘘は許されない』と感じた。

感じたから、僕は本当の事を話した。
烏羽先生という不気味な先生に、『悪』とは何なのかという知識を叩き込まれたこと。
一緒にダンススクールに行ったこと。

そして来月の秋祭り、僕は『スカイパイレーツ』の一員として踊るということ。
吐き出すように僕は全て話した。

でもその中でお姉ちゃんが一番驚いていたのは、リーダーの江島葵さんの存在だった。
その話だけはお姉ちゃんは瞬き一つせず、驚いた表情で僕を見つめていた。

そういえば同じ小学校の同級生だったっけ。

あまり見たことのない顔で話を聞いているから、『お姉ちゃんはリーダーに恋をしていたのだろうか』と、そんな事を考えてしまった。

そして最後に『その話、絶対に茜ちゃんの前では言わないでね』って念入りお姉ちゃんに言われた。

・・・・・・。

まあ、そうだよね・・・・・。