本降りの雨の中、傘を差して着いた場所はいつもお馴染みの城崎さんのカフェだった。

本当に『お姉ちゃんと茜さんはこの店が好きだな』と僕は思った。
僕はまだ手伝った一回しか来たことがないのに。

店内に入ると城崎さんが笑顔で出迎えてくれた。
朝から夜遅くまで働いてタフな人だ。

「いらっしゃい。予約の小緑ちゃんね。予約時間から二時間近くも遅れているから『営業妨害で料金倍』にしようかと思ったけど、今日は許してあげる。だって今日は小緑ちゃんの日だからね」

笑顔で終始意味の分からない城崎さんの言葉に、僕は首を傾げる。
一方で隣ではお姉ちゃんが『遅れて本当にすいません』と何度も頭を下げていた。

その光景も何なのか、僕は全く理解できなかった。

店内にはほとんどお客さんはいない。
カウンターにはお客さんはいないし、中央の大きなテーブル席に見覚えのある人物が四人座っているだけ。

でもその四人、僕は全員知っているかも。

「こっちゃん遅いよ、どこ行ってたのさ。『主役』だからって遅れていい理由にはならないよ」

頬を膨らませて樹々さんは言った。
でも僕の隣にいる茜さんが『樹々が遅刻を語るな』って怒った声で言ったら、樹々さんは怯んだようにも見えた。

そして困った表情で樹々さんは苦笑いを浮かべていた。

樹々さんの他にも瑞季や向日葵の姿に、橙磨さんもいた。
夜遅くに勢揃いで一体何が始まるのだろうか。

お姉ちゃんにまた背中を押されるように、僕はみんなのいるテーブル席に座らせられた。
そしてお姉ちゃんはみんな揃ったのを確認する。

『今日はなんでも注文してもいい』と言うお姉ちゃんの言葉に、みんなそれぞれ好きな料理を注文をした。

僕も脅されるように『何かを注文しろ』と言われたため、『ミートボールのクリーム煮』という料理を注文した。

ってかみんな、なんだか怖いよ・・・・。

注文を受けたのは城崎さんだ。
綺麗な金髪のショートヘアを揺らして、身内だというのに腰を低くして注文を伝票に書き込む。

って言うか店長であるこの人が料理を作るのではないかと思った矢先、厨房から見たことのある男性が現れた。

確か瑞季のお父さんの東雲さん。
この前作ってくれた昼御飯、スッゴく美味しかったというのを僕は覚えている。

もうここでずっと働いているのだろうか。

でも今はそんなことはどうでもよくて・・・・・。