「電話したら鳴るんだけど。本当に電池切れているの?見てないだけじゃないの?」

「へえ?」

僕の鞄から携帯電話のバイブ音が小さく鳴り響く。
『鳴る』ってことは『電源が付いている』と言うことだ。

他に携帯電話以外の物なんて持っていない。

「どうして嘘つくの?」

「嘘じゃない。さっき本当に切れていたんだもん!」

右手に自分の携帯電話を握るお姉ちゃんを見て、僕は不安と怒りのような声で反論した。

でも僕はクズだ。
嘘に嘘を積み重ねて場を逃れようとする。

お姉ちゃんは、ただ妹を心配してくれただけだと言うのに・・・・。

「ねえ紗季。こんな感じでいいかな?さっきよりは上手く出来たつもりなんだけど」

その時、お姉ちゃんの隣から茜さんが顔を覗かせた。
僕に気が付いている様子はなく、お姉ちゃんと話している。

「あーうん。だいぶ良くなったと思うよ。それ城崎さんに見せに行こうよ。今から行くし」

「うん、わかった」

何を作ったのかは僕には分からなかった。
茜さんは再びキッチンに戻ったようで姿を消した。

一方のお姉ちゃんの怒りは収まらない。

「もう・・・・。なんで今日に限って遅く帰ってくるのさ。せっかく城崎さんが席押さえてくれているって言うのに」

「城崎さん?今からどこか行くの?」

「早く支度して。と言うかもうそのまま行くよ。茜ちゃんも行けるかな?」

「うん。それとお弁当箱これ使っていい?」

お姉ちゃんは細い目で僕を睨み付けている。
『悪いことをした』と思うけど、答えてくれてもいいんじゃないだろうか。

愛想尽きたように、冷たく接するお姉ちゃんの姿に、僕は『帰る家を間違えてしまったのではないか?』と、そんな気分になってしまった。

何を企んでいるのだろうか。
それとも、本当に愛想が尽きてしまったのだろうか。

不安に押し潰されそうになりながら、僕はお姉ちゃんに背中を押されるように家を出た。