「若槻瑞季の件、俺はよくやったと思っているぜ。ありがとう。そんでゴメンな。ふざけた学校の対応で。お前のした行動は、何一つ間違ってはいねえよ」

烏羽先生の大好きな音楽に混ざってうまく聞き取れなかったけど、褒められた気がした。
褒められるなんて何年ぶりか分からないから、適当に知らない顔を浮かべていた。

けど急に視界がぼんやりして、耐えれなくなって、僕は泣いた。

褒められたことに対してじゃないと思う。
『共感してくれたから』だと、僕は泣きながら思った。

お姉ちゃんが励ましてれる言葉とはまた違うような、『頑張れ』という言葉とは、また違うような。

僕は間違っていないと証明されて、それが嬉しくて、耐えられなくて。

僕は音楽が聞こえなくなるくらい大きな声で泣き続けた。
その僕の様子を、烏羽先生は見守ってくれた。

『明日もダンススクール行ってみるか?』そう言う烏羽先生に、くしゃくしゃになった表情で僕は大きく頷いた。

そしたら『明日は動きやすい服装で来いよ』って烏羽先生は目を輝かせていた。

やがて車は僕の家に着いた。

僕は車を降りて、運転席に座る烏羽先生に振り向く。
そしたら烏羽先生は笑顔で手を振ってくれた。

先生だから、年上だから、手を振らずに軽く頭を下げたら怒られた。

『そこは手を振り返せよ』って烏羽先生はそう言ってまた笑ってくれた。
また僕を励まそうと優しく笑ってくれた。

その優しい対応から、評判通り『生徒の気持ちを分かってくれる子供みたいな先生』だと、改めて僕は感じた。僕は自分の家に帰るため、いつも行き来するエレベーターに乗って家の玄関に向かう。