五章は少し特別な話のような、外伝のような話だった。
主人公は悪役のアーロン。

ある組織に追われるアーロンは、その組織のボスを暗殺するという話だった。

マークの推理ゲームとは大きく異なり、殺し屋のアーロンを操作するということから、アクションゲームをしているような別のゲームをしているような気分にさせられる。

ゲームの物語終盤、状況は今と同じ雨の中だった。
そして何度も敵と対決した主人公のアーロンは、足を怪我していた。

同時に敵のボスに追い詰められていた。

そのボスの右手にはナイフ。
アーロンには抵抗する力も残っておらず、完全に追い詰められた状態だった。

抵抗できそうな武器も周囲には落ちていないし、後は煮るなり焼くなりボスの勝ちが濃厚に見えたその時、アーロンは最後の切り札を取り出した。

その切り札とはポケットに潜ませていた拳銃のこと。
前回の戦いで、アーロンは相手の持ち物から拳銃を持ち出していたのだった。

アーロンはボスに銃口を向けた。
するとボスはいきなり降参宣言。

『負け』を認めると同時に、ありとあらゆる事を話し出した。
『アーロンを狙う理由』や『組織を作った理由』とか。

ボスは震えるように全てを語りだした。

「どうしてそんなことを言うか。それは悪の中に、『恐怖』と言う言葉が生まれたからだ。『自分より目の前の相手の方が優れている。相手の方がよっぽと悪いことを考えている』って。何メートルも離れた相手なら、ナイフより拳銃の方が有利だからな」

烏羽先生が言う通り、きっとボスは恐怖に襲われたんだろう。
ボスは心の中で『勝てる』と思った直後、自分を超えた殺人能力を見せつけられた。

今まで威勢よくアーロンを脅し続けたが、『今から自分は殺されるんだ』という目の前の恐怖感に包まれて腰を抜かしたのだろう。

間抜けなボスだ。