「スカイパイレーツ。この名前、葵を見て思い付いたんだ。言葉通り、悪役は悪役らしく。だから『その悪役が活躍できる場を作ってやろう』って思ってな。アイツが居ても許されるような場所。悪いことをしても許されるような、そんな場所。それがスカイパイレーツだ。海は本当の海賊がいるかも知れねえけど、空には悪い奴は誰もいねえ。ならいっそ、『その小さい翼で羽ばたいてみやがれ』って。『この広い空で、悪いことの一つくらいやってみろ』って。どうだ、カッコいいだろ?」

『そんなことを言われてもわからん』と言うのが僕の答えだった。
声に出さなかったから、無意識に僕は先生から目を逸らしていた。

ってかその烏羽先生の言葉を聞いて思ったけど、『悪いことを正論』のように言うが、本当にそれでいいのだろうか。
僕の親友の大村瑠璃は、悪者のままでいいのか。

悪は退治しなくていいのだろうか。
助けなくていいのだろうか。

悪いことを放っておいてもいいのだろうか。

悪いことしているなら、止めないと。
そのための警察や生徒指導部だと僕は思う。

「そう言えばアイツが六年の時に、俺は思いきって『お前は正義じゃなくて悪だからな』って言ったら酷く落ち込んでいたっけ。まあでも、『別に悪でもいいんじゃねえ?』って俺は思うけどな」

僕の待ち望んでいたような烏羽先生の言葉に、僕は顔を上げた。

「どうしてですか?」

「どうしてって、カッコいいじゃん」

「はぁ?」

何て言うか、聞いた僕が馬鹿だったと自分を責めた。
悪が支持される理由、改めて自分で考えてみたが何一つ『悪が素晴らしい』という答えは出てこなかった。

やっぱり、悪は悪だ。
それを止めるのか正義だ。

例えば悪役にやられている僕を支えてくれた瑞季や麦のような、『正義のヒーロー』のような存在。
彼らは傷付きながらも、僕をいじめる悪と戦ってくれた。

そんな悪と戦う正義の味方の瑞季や麦を否定するようなことは絶対に言いたくないし、『悪が正しい』なんて絶対に間違っている。

じゃなきゃ、僕も瑞季は助けなかった。
『自分の行動は間違ってない』と思って、あの日瑞季を助けようとした。

悪のような瑠璃や砂田を見て、『僕は戦おう』とあの時思ったから。

だから、悪は許してはいけない。
悪いことをする奴は、僕が絶対に許さない。

けど・・・・。

「お前、『悪いことをする奴は全て悪い』って思ってるんじゃないだろうな?」
僕の考えを全部覗いていていたような烏羽先生の言葉に、一瞬ためらった。
顔に出ていたのだろうか。

それとも人の心を読むような超能力を、烏羽先生は持ち合わせているのだろうか。

どっちにしろ、そんなことを指摘されても僕の考えは変わらない。