江島葵(エノシマ アオイ)。
それがリーダーと呼ばれる彼の名前だった。
背の高い花のような香りのする男子高校生。
優しそうな、少し控えめな、どこにでもいそうな男子高校生だ。
そんな優しそうな人が『言うことを聞かなかった』って、何かあったのだろうか。
その烏羽先生の言葉はどうも受け入れられなかった。
受け入れられなかったから、僕は問い掛ける。
「悪い人には見えませんけど」
「今はな。アイツも死ぬほど悩んだから、変わったんだろう。『自分のせいで、親友の人生を狂わせてしまった』って、後悔していたよ」
「親友、ですか?」
親友と言う言葉を聞くと、僕はいつも瑠璃の事を思い出す。
狂った親友の人生。
毎日僕を攻撃して、もう彼女との間には僕との『親友関係』の跡形は残っていないだろう。
だから親友と言う言葉を聞くといつも胸がざわつく。
「『俺が教えたクラスでいじめが起きた』って昼休みに言っただろ。女の子が保健室に籠ってしまったっていう話。その女の子をいじめた主犯は葵だよ」
「えっ?」
僕は食い付くように、運転する烏羽先生に視線を移す。
同時に烏羽先生も、今は雑音となってしまった大好きなバンドの曲の音を消した。
烏羽先生は教えてくれる。
「小五の時だな。葵と女の子は飼育委員でさ、当時はウサギを飼っていたらしいんだ。でもある日、ウサギが死んだ。そのウサギが死んだ前日に餌を与えた飼育委員の二人に『何か変わった事が無いか』と学校側は聞いたようだ。何でもいいから、疑うつもりもない。ただ二人は何をしたのか、学校側は知りたかっただけ。でも二人は何故か黙秘。そしたら二人の担任の黒沼(クロヌマ)っていう先生がキレて、二人を脅した。怖くなった葵は自らがウサギに花を食べさせたと言うのに、罪を女の子だけに投げつけた。そして葵は逃げた。逃げた理由は知らん。それだけは、今となっても何度聞いても話してくれねえよ」
・・・・・・。
「そこからだ。女の子へのいじめが始まったのは。女の子が教室に戻ったら、彼女は酷い攻撃を受けた。葵は仲の良かった男友達も交えて、女の子をいじめた。アイツ憎たらしいことに顔いいし身長高いから、クラスメイトに人気でさ。悪者の葵をみんなが支持するんだ。まるでウサギを殺した悪を退治するように、女の子をいじめ続けたんだ。自分は悪なのに、正義になったつもりだったんだろうな」
僕はその烏羽先生の言葉を脳裏に焼き付かせるように、瞬き一つせずに真剣に聞いた。
でもさっきとのリーダーの姿とは想像出来ない彼の過去に、僕は何を信じたらいいのかわからなくなった。
その烏羽先生の話も、実話なのだろうか。
僕に何かを考えさせるような時間を与えるように、少し間を置いてから烏羽先生はまた話してくれた。
それがリーダーと呼ばれる彼の名前だった。
背の高い花のような香りのする男子高校生。
優しそうな、少し控えめな、どこにでもいそうな男子高校生だ。
そんな優しそうな人が『言うことを聞かなかった』って、何かあったのだろうか。
その烏羽先生の言葉はどうも受け入れられなかった。
受け入れられなかったから、僕は問い掛ける。
「悪い人には見えませんけど」
「今はな。アイツも死ぬほど悩んだから、変わったんだろう。『自分のせいで、親友の人生を狂わせてしまった』って、後悔していたよ」
「親友、ですか?」
親友と言う言葉を聞くと、僕はいつも瑠璃の事を思い出す。
狂った親友の人生。
毎日僕を攻撃して、もう彼女との間には僕との『親友関係』の跡形は残っていないだろう。
だから親友と言う言葉を聞くといつも胸がざわつく。
「『俺が教えたクラスでいじめが起きた』って昼休みに言っただろ。女の子が保健室に籠ってしまったっていう話。その女の子をいじめた主犯は葵だよ」
「えっ?」
僕は食い付くように、運転する烏羽先生に視線を移す。
同時に烏羽先生も、今は雑音となってしまった大好きなバンドの曲の音を消した。
烏羽先生は教えてくれる。
「小五の時だな。葵と女の子は飼育委員でさ、当時はウサギを飼っていたらしいんだ。でもある日、ウサギが死んだ。そのウサギが死んだ前日に餌を与えた飼育委員の二人に『何か変わった事が無いか』と学校側は聞いたようだ。何でもいいから、疑うつもりもない。ただ二人は何をしたのか、学校側は知りたかっただけ。でも二人は何故か黙秘。そしたら二人の担任の黒沼(クロヌマ)っていう先生がキレて、二人を脅した。怖くなった葵は自らがウサギに花を食べさせたと言うのに、罪を女の子だけに投げつけた。そして葵は逃げた。逃げた理由は知らん。それだけは、今となっても何度聞いても話してくれねえよ」
・・・・・・。
「そこからだ。女の子へのいじめが始まったのは。女の子が教室に戻ったら、彼女は酷い攻撃を受けた。葵は仲の良かった男友達も交えて、女の子をいじめた。アイツ憎たらしいことに顔いいし身長高いから、クラスメイトに人気でさ。悪者の葵をみんなが支持するんだ。まるでウサギを殺した悪を退治するように、女の子をいじめ続けたんだ。自分は悪なのに、正義になったつもりだったんだろうな」
僕はその烏羽先生の言葉を脳裏に焼き付かせるように、瞬き一つせずに真剣に聞いた。
でもさっきとのリーダーの姿とは想像出来ない彼の過去に、僕は何を信じたらいいのかわからなくなった。
その烏羽先生の話も、実話なのだろうか。
僕に何かを考えさせるような時間を与えるように、少し間を置いてから烏羽先生はまた話してくれた。