「スカイパイレーツ?」

休憩が終わって、再び潤さんの指導で踊る彼らを見学しながら僕はベンチに座っていた。
同時に僕はこの少年少女のダンスチーム名を口に出した。

「そう。何て言うか、悪そうでしょ?烏羽先生が名付けてくれたんだ。『平和なこの街に、たまには悪さを企む悪戯好きの少年少女が居てもいいんじゃないか』って。ダンスの衣装も、ちょっと黒と青で悪っぽくイメージしているんだ。でもみんな仲間思いのいい生徒ばかりだけどね」

僕の隣にはリーダーが座っている。
青い半ズボンを履くその右膝には、サポーターのような白いテーピングが何重にも巻かれていた。

話を聞くと去年の練習中に痛めてしまったらしい。

「山村はどっちかと言うと悪役だもんな。校則破りのその明るい髪色。どっからどう見ても不良だろ。でも丁度いいんじゃねぇ?チームカラー的に」

直ぐ様、僕は同じように見学する烏羽先生を睨み付ける。
『殴れるもんな殴ってみろ』と、ふざけた表情を浮かべる烏羽先生に飛び付こうと思ったが、色々問題になりそうだったので止めた。

今日は『初日』と言う事と、『体操服も家に置いてきてしまっている』という理由から、僕は見学をしていた。
踊っているのは小学生だけではなく、僕と同じか上の中学生も混ざっている。

見たことのない生徒だ。
他校の生徒だろうか。

それとも僕が知らないだけなのクラスメイトなのだろうか。

生徒達の歓迎してくれるようなダンスを見ていたら、あっという間に時間は過ぎた。
いつの間にか、時間は夜の七時を回っていた。

今日の練習が終わり、保護者達が迎えに来る。

練習終わりに部活の少年漫画でよく見るような、『ありがとうございました』という元気に溢れた声が練習場に響き渡った。

みんな指導者である潤さんにお礼の挨拶をしたというのに、生徒は個別で潤さんや烏羽先生に挨拶をして帰る。

その時こんないい子ちゃん達に『スカイパイレーツ』、別名『空の海賊』と名付ける烏羽先生はどうかしていると思ってしまった。
そして僕らも立ち上がる。

「俺らも帰ろうか。リーダーも送るぜ。その膝だし」

「すいません、ありがとうございます」

生徒達が全員帰った事を確認すると、僕も帰ることを決意。
そして僕も潤さんに『今日はありがとうございました』と伝えた。

でも何が気に食わないのか分からないけど、終始不満げな表情を浮かべる潤さん。
僕が『入会する』と言わなかったからだろうか。

正直言って、それについてはまだ悩んでいる。
お姉ちゃんにも相談したいし。

どうやらここのダンススクールは潤さんの実家らしい。
家を改造して、このダンススクールの練習場を作ったとか。

潤さんも『高校のストリートダンス部で全国大会に出場した』ってリーダーが話してくれた。
やる気の無さそうな見た目や考えはともかく、凄い指導者なんだと僕は改めて知った。