「よろしくお願いします」

まあどうでもいいかと、僕は軽く頭を下げる。
テキトーに『リーダー』と呼べばいいかと、気持ちを切り替えた。

「小緑ちゃんだね。了解っす。よろしくね」

彼からうっすら香るこの香り。
何だろうこれ。

嗅いだことのあるような、ないような。
よく分からない花のような香り。

香水でも使っているのだろうか。
そう言えば彼を見ると、何故だか茜さんの表情が脳裏に浮かぶ。

・・・・・・。

どうしてだろう。

無関係なはずなのに。顔や雰囲気は全然似ていないのに、どこか茜さんと似ていると思うのは気のせいだろうか。

例えば茜さんから感じる充実した日々に、どこかぽっかりと空白あるように。
まるで真ん中のピースが欠けた完成したジグソーパズルのような不自然さ。

そしてそれは彼からも同じものを感じた。

それが何なのか。
彼と茜さんは関わりがあるのかどうか。

今の僕には何一つ分からなかった。