「来月の赤崎祭。そこで俺の教え子がストリート系のダンスを披露するんだけどさ、少子化でダンススクールの生徒が少なくて。ほら、山村が来てくれたら見映えよく今年も踊れそうなんだけど」

それが烏羽先生の頼みのようだった。
少し恥ずかしそうに話す烏羽先生は『どこか面白い』と思う自分がいた。

でもその話を自分の中で解りやすく組み換えて理解した時には、僕は焦り出した。

「だ、ダンス?ぼ、僕がですか?」

「頼む!力を貸してくれ!今のお前の抱える問題も知恵出すから!俺が何とか助けるから!」

烏羽先生は土下座しそうな勢いだったが、それは僕が何とか止めた。

って言うか烏羽先生が『ダンス』って何だか想像できないな。
ストリート系ってどんなダンス何だろう。

そのダンスをする人達ってどんな人なんだろう。

そう考えたら、興味が無いわけでも無さそうだった。

「それが、今日の放課後ですか?」

「そうだ。マジで頼む・・・・・」

家に帰ってすることと言えば、いつでも出来ることばかりだ。
今日しか出来ない事なんて特にないし。

「まあでも、暇ですしいいかも。最近勉強とゲームしかしてないですし」

「まじか!よっしゃあ!まじでサンキュー!山村!」

飛び上がるように喜ぶ烏羽先生を見て、そんなに嬉しいものなのだろうかと僕は疑問に思った。

てか『少子化』ってなんか重そうなワードだし。
僕でよければ力になれることは何でもいいからやっておきたいし。

「んじゃ今日の放課後、生徒指導室に来てくれ。まじで助かるぜ!アイツも今年が最後だし。何とか花を持たせられる」

気になる烏羽先生言葉だったが、あまり気にしなかった。
まあその『アイツ』の名前を聞いてもわからないだろうし。
最後か。

そう言えばお姉ちゃん、春になったらこの町を出ていくんだった。
『県外の専門学校に通うため、一人暮らしをする』って言っていたっけ。

となればお姉ちゃんもこの毎年行われる秋の祭りである赤崎祭も今年が最後だ。
多分最後だから、城崎さんは屋台を好きなように出しても良いって言ってくれたんだろう。

寂しくなるな。僕一人であの両親がどうにかなるとは思わないし。
課題は山積みだ。

もっと僕頑張らないと。

「いい奴ばっかりだから安心しな。ヘタレなリーダーとはすぐ仲良くなれると思うし。お前なら出来る」

でも僕一人じゃない。
お姉ちゃんが居なくなっても、支えてくれる人がいる。

両親への不満があるなら、烏羽先生に言ってみよう。
少しは何かが変わる気がすると思うから。

また少しは前を向いて歩けるかな?一つ楽しみが出来た。
その言葉を忘れずに、僕はチャイムが鳴ると同時に教室に戻った。

いつも通り黒板に悪口を書かれていたけど、今日は頑張れる気がする。

そんな事を思ったら、あまり苦ではなかった。
時間もあっという間に流れて放課後を迎えた。