「いや、だって先生も持っていたじゃないですか!それで僕を指導しても無駄ですよ!」

「『持っていた』ってなんの事だ?何を勘違いしてやがる」

『この人を信用した僕が間抜けだった』と理解した。
同時に心の底から悔しくて、そのふざけた烏羽先生の笑みをぶん殴りたいと思った。

「嘘つくな!そのポケット、今さっきゲーム機があった!」

僕は烏羽先生に怒りを露にしたら、烏羽先生は理解に苦しむ言葉と共に頭を撫でてくれた。

って、・・・・え?

「そうやってもっと怒ってくれたら、もっと早く解決するけどな。ってそんなことやっても、変わらねぇか。お前が一番理解してるもんな」

「えっ?」

僕は首を傾げると、烏羽先生はここに来た理由を話した。

「大村、お前だけで何とかなると思うか?」

僕は動揺した。
無意識に烏羽先生から目を逸らし、拳を握っていた。

「分からないです・・・・」

僕がそう言うと、烏羽先生は二度頷いた。

逃げたような僕の言葉でも、一生懸命に考えようとしてくれる真剣な眼差しに、今日の瑠璃からされた酷いことが脳裏を過った。

烏羽先生の目的は、僕を励ましに来たんだろう。
同時に力になろうとしてくれる。

担任は何一つ知らない顔しているけど、この先生は違う。
間違いなく僕の味方だ。

「辛いか?」

小さく、僕は頷いた。
すると悔しさがまた溢れ出して、泣きそうに鼻を啜った。

「そうか。しっかし、お前の担任もまるで他人事だな。全然大村と話そうとしない。って言うか、なんでお前が謹慎になったのかイマイチ理解出来ん。いくら山村が相手を殴ったからって、大村と同じ処罰にはどうも納得が出来ん。お前はいじめられた他の生徒を庇ったのだろ?庇ってなんで謹慎になるんだよ。そんなことしたら、生徒は誰も助けようとか思わなくなるぞ。そんなふざけた対処で、今の問題は収まらねえってなんで誰も気付かないのかな?いっそのこと俺が説得して・・・・いや、でもあいつ聞いてくれなさそうだし。それなら俺から生徒指導部のトッブに・・・・あー、くっそー!絶対にあのオッサン聞いてくれないし」

僕に話し掛けていたつもりが、いつの間にか独り言のように話す烏羽先生。
イマイチ何を言っているか理解できない言葉に、僕は不安になった。

「先生?」

「なんだ山村。俺は今忙しいんだ」

完全に自分を見失っていると僕はため息を吐いた。

この人も生徒指導部の人間だ。
『誰かこの人を指導してほしい』と、僕は再びため息を吐くと同時にそんな事を考えていた。

そう考えていたら、耳を疑うような烏羽先生の声が聞こえた・・。

「俺さ、いじめって絶対に許せねえんだ」

その時、僕は烏羽先生と目が合った。
さっきとは別人のような悲しそうな目をしている。