風邪と人生初の謹慎が重なったせいか、僕『山村小緑(ヤマムラ コノリ)』の身体は鉛のように重く感じた。
学校へ向かうこの時間も何だかダルい。

一週間の生徒指導室での謹慎を終えた僕は、教室へ戻った。

何も変わらない。
クラスメイトが変わった訳でもないし、担任が変わった訳でもない。

ただ何かが違った。
それが何なのか、僕は一生懸命考えてみてはいるも、全く分からなかった。

変わっていない事と言えば、僕への嫌がらせも継続されている。

瑠璃も僕と同じく謹慎を受けた。
そして同じ頃に教室へ帰ってきた。

だが謹慎になったからと言って、瑠璃は反省しなかった。
それどころか状況は更に悪化した。

僕はどこに行っても彼女に付きまとわれ、瑠璃は病気のように攻撃をしてくる。
ドラマや漫画で見たことあるように、僕がトイレの個室にいたら頭から大量の水を掛けられた。

寒くなるこの時期、病み上がりだというのに、本当に勘弁してほしい。

僕は瑠璃に何も言わなかった。
言った所で、話し合った所で、瑠璃は変わらないと言うことはわかった。

僕の声はもう瑠璃には届かないのだろう。
樹々さんにアドバイスを貰ったというのに、本当に困ったものだ。

そんなことを考えながら、僕は授業を受ける。
今日の四限目の授業は国語だった。

お姉ちゃんや茜さんに勉強を教えてもらって、なんとか授業に付いていくことは出来るようにはなったが、まだ全く理解できないと言うのが本音。

『二週間後に迫った中間テストは大丈夫なのだろうか』と、僕は不安になった。

「んじゃ次は山村。続きを読んで」

「はい」

とっさに当てられた僕は、教科書の一文を読む。
あまり大きな声ではないが、クラスメイトには聞こえる声だ。

やる気のない、ダルそうな鼻声。

「はい、そこまで。あんがとさん。次は大村、読んでくれ」

当てられた事に苛立ちを覚えたのか、瑠璃は舌打ちと共に立ち上がる。

彼女は全く勉強していないのか、所々出てくる漢字に苦戦。
先生に読み方を訂正されるなど、散々な瑠璃の音読だった。

「はい。そこまで。んじゃ次、大村読んでくれ」

その先生の言葉に、クラスメイトの視線が教壇に立つ先生に移る。
教壇に立つ先生はみんなの視線を独り占めにする。

僕もその中の一人だ。
無意識にクラスメイトに吊られるまま、目の前の先生を確認した。

同時に僕は思い出した。
国語の先生は皆から恐れられるカラスのような、闇に染まった雰囲気を持つ烏羽(カラスバ)先生だと言うことに・・・・。