「よっしゃあ!命中!ニャーニャーだがギャアギャアだか知らねえがうるせんだよ!」

空き地の真ん中には若い男が二人。
その彼らの手には大きめの石を握り締めていた。

彼らの目の前には一匹の子猫。

「次、灰根さんっすよ!」

「任せろ」

灰根という身長の高い男は、大きく振りかぶる。
まるで野球の投手を思わされる綺麗なフォーム。

しかし投げたその先は見ていて気持ちのいいものじゃなかった。
ただただ残酷な光景。

遠くで聞こえていた猫の鳴き声が私の前から聞こえてくる。

・・・・・・・。

いや、それはもはや鳴き声ではなく『悲鳴』だ。
だから目の前の残酷な光景に、私は思わず目を瞑った。

灰根と言う男が大きな石を投げたその先、真っ赤な子猫が一匹。

ちなみに『真っ赤な子猫』は珍しい赤毛の猫ではない。
石を当てられて、血に染まった白猫だ。

大怪我をして悲鳴を上げるのがやっとの子猫・・・・。

そんな子猫を見て男達は笑う。

「さすがっすね、灰根さん!ってか誰か見てますよ」

その時、私は『灰根さん』と呼んでいる目付きの悪い男と目が合う。
逃げることも出来たが、どうも足が動かない。

・・・・・・・。

何故だろう。喧嘩なんてしても勝てるわけないのに、私は彼らを睨み付けていた。
『飼育していた動物なんてどうてもいい』と思っていた私なのに、無性に腹が立つのはなんでだろう。

そんな私に、灰根と言う男が疑問を抱く。

「おい嬢ちゃん!なんかガン飛ばしてるみたいだけどよ、何か用か?それとも、お兄さんが遊んであげようか?」

ゆっくり近付いてくる灰根という男。
相手が制服を来た女だからか、彼は私に不気味な笑みを見せている。

一方の私は何とかしようと思うも、脳が全く考えようとしない。
どうしてだか樹々の顔が浮かんでくる。

「黙ってねぇで何か言えよ。俺らを止めるために来たんじゃねぇのか?おい」

灰根と言う男の言う通りだ。
ここは通学路でもないのに。

いつもは通らない道なのに・・・・。
そもそも何でこんな場所に止まったんだろう。