「明るすぎ・・・・ってか派手すぎません?」

出来上がった新しい自分の姿に、あたしは苦笑いを浮かべていた。

鏡に映る明るい茶髪の少女。
ギャルにも見える変わり果てた自分の姿に、『誰だコイツ』って心の中で語りかけていた。

そんなあたしを見て、杏子さんは微笑む。

「いいの。それくらいヤンキーぽくいたら、知らない間に声かけられるわよ。人気者になれるわよ」

「それ、『生徒指導部から声がかけられる』とかじゃないですよね?」

そう自分で言ったら、明日の入学式が不安になった。
そもそもこんな髪色で入学式に出させてもらえるのだろうか。

そしてあたしの言葉に、案の定杏子さんは怒り出す。

「もう!外見が変わったんだから、内側も変わりなさい!じゃないと、もっと美憂みたいにもっと明るく染めるわよ」

そう言う杏子さんの言葉に、カウンター席で踞るシロさんを見た。

髪は短いショートヘアーで、綺麗な髪色だった。
まるでハリウッド映画に出てくる外国の女優のような金髪に、あたしは少し羨ましいと思ってしまった。

でも流石に高校生でこんなに明るかったら、クラスメイトからドン引かれる・・・・。

そう思いながらも確か今年の夏休み、みんなで行った夏祭りではあたしはシロさんと同じ色の金髪に染めた。

もちろんあたしが染めたいと言ったんじゃない。
捕まって染められたのだ。

もちろんこの無茶苦茶姉妹に。
『学校がないから』という理由で好き放題しやがって。

今になって振り返ってみたら、あたしの外見以外で変わったことは正直ないと思う。

『外見が変われば内面も変わる』と杏子さんは言っていたが、あたし自身が思うには、『内面は昔の松川樹々』のままだ。

弱気で世間知らずで、自分の事しか考えられなくて、誰かに支えられて生きている、ひ弱な生き物。
弱肉強食の世界だったら、あたしは真っ先に食べられるだろう。

でも茜の前では変われた気がする。
昔のあたしを悟られないように、あたしは彼女の前では嘘を貫き通した。

『友達がいっぱいいそうな派手な女の子』って思われたくって・・・・。

だけど、それでもいいのかな?
お母さんが目を覚ましたら、いつか聞いてみよう。

答え合せしてみよう。

『あたし、変われたかな』って。

・・・・・・・・。

「お母さん、若槻樹々は面接に行ってきます」

部屋に飾ってある遊園地で撮った家族の写真を見て、あたしは呟いた。

写真に写る、笑顔であたしを背後から抱き締める杏子お母さんの姿に、あたしは『絶対に負けるか!』と誓った。