『自分で何か出来ないなら誰かに頼ろう』

その言葉は人として当たり前の事らしいが、どうもあたしにはその言葉を理解するのに時間がかかった。
もちろん理由はある。

あたしは幼い頃から周りから妬まれて生きてきた身だ。
父が大量殺人を犯し、あたしの家族はどん底に叩き落とされた。

周囲からは『人殺しの娘』と言われ、あたしは酷いいじめを受けた。

そんなあたしが家族以外の誰かを頼るなんて、不可能に近かった。
そもそも家族以外に心を許した記憶は全く覚えていない。

そのあたしの常識を覆したのが、目の前の『滅茶苦茶姉妹』だ。
『私達なら頼ってもいい』って、行動や言葉で教えてもらった。

同時に『頼る事の意味』を教えて貰った。

そして気が付いた。
それがあたしの中で『常識』に変わってきているって。

『誰かを信じることが、人と人との関係を築き上げていく』って言葉の意味がわかってきた気がする。

でもそれに気づいたのは本当に最近だ。
分かっていたつもりだけど、全然分かっていなかった。

それに気がつけたのは、家族で遊んだ遊園地に行った日。
杏子さんに『家族にならないか』と言われた日。

そしてお母さんが倒れた日・・・・・・。

あの日の帰り道、瑞季や向日葵、そしてシロさんの辛そうな表情を見て、あたしはようやくお母さんの気持ちが少し分かった気がする。

まだなんとなくだけど。

なんとなく・・・・・。

お母さんはみんなを引っ張ってきた。
みんなの先頭に立っていた。

その意味を、お母さんが倒れてからずっと考えてきた。

『どうやったらあたしも先頭に立てるんだろう』って。
『どうやったらみんなに認めてとらえるのだろう』って。
考えた結果が『もっとあたしを頼ってほしい』と言う結果だ。
『もっとお姉ちゃんに相談してほしい』って。

あたしがみんなを守る。
だから、『樹々お姉ちゃんを信じてほしい』って。

新しい家族が出来てから、そんなことをずっと思っていた。

同時に、あたし自身も『信じる』と言う言葉を、あたしはようやく理解した。
あたしも『誰かを信じてみたい』と思った。

正直言って、あたしらしくない言葉を言うのに何度も抵抗があった。
でも『頼ってほしい』と思ったら、恥ずかしさはどこかに消えてしまった。

ただあたしは二人の泣き顔が昔の自分を見ているようで嫌だった。
『そのまま生きていったら、あたしのような寂しい人になっちゃうんじゃないか?』って。

お節介かもしれないけど、『助けたい』と思った。
『信じてほしい』と思った。

そう思わせてくれたのは、間違いなく目の前の二人の姉妹のおかげ・・・・。

・・・・・・。