投げ捨てるような僕の言葉の後、僕は自分の引き出しからお気に入りのブレスレッドを取り出した。
そしてすぐに腕につけると、教室を後にした。

それと鞄からいつものヘッドホンを取り出し耳に当てた。

同時に再び彼の声が聞こえた。

「あ、あの。山村さん」

「なに?」

瑞季とは話したことない。
出席番号が僕の次ということで、整列するときはいつも僕の後ろにいるけど話した記憶はない。

僕はクラスに友達はいない。
一時期家出をして不登校になった時期もあったが、再びクラスに戻ってきても誰も声をかけてくれなかった。

まるで最初から僕の姿を見えていないような・・・・・。

だから僕はいつだって空気のような存在だった。
瑠璃から攻撃受けているときも、みんな知らない顔しているし。

そして目の前の瑞季も、僕と似たような存在だ。

彼の場合は友人がいないという訳ではないが、仲のいい生徒とはクラスが違うため、休み時間しか一緒になることがない。

だから基本的にはいつも一人で本を読み、体育の時間でグループを作る事になると決まって瑞季は最後まで残っていた。

どこか僕に似ている。

「その、一緒に帰りませんか?」

その彼から声を掛けられた。
初めての出来事に、僕はなんて返したらいいのか分からなかった。

「うん?好きにしたら」

僕の投げ捨てるような言葉の後、彼は笑顔を見せた。
女の僕より可愛らしいその笑みに、僕はなぜか嬉しいと思ってしまった。

何て言うか、この前の茜さんと遊んだ時のようだ。

でも、その『嬉しい』も、一瞬で何処かに消えてしまった。