「茜ちゃん最近宮崎さんの曲聞いているんだって?どうだった?」

突然の栗原先生の質問に私は驚く。

と言うか、さっきから栗原先生の様子がおかしい。
なんで私の事を気にしたり、春茶先生の会話を止めたりするんだろう。

何だかまるで、宮崎紅の正体を知っているような素振りだ。
何を隠しているんだろう、この二人は。

と言うか絶対に何か隠してる。

もしかして、春茶先生が突然引退した理由と何か関係しているのだろうか。

・・・・・・。

まあでも、私が考えも仕方ない。
ここは質問の言葉だけ答えておこう。

「はい、凄いって言うか。なんて言うか・・・・・。何だか『K・K』に似ているって言うか」

上手な感想を言えなかったが、栗原先生は私を見て笑った。.

「そう。んじゃ、いっぱい勉強しておいてね。そのうち役に立つ日が来るから」

栗原先生こ言葉に私は首を傾げた。
『役に立つ』ってどういう意味?

そういえばこの前、兄にも変な質問されたっけ。
あんまり思い出したくないけど。

「失礼します。カレードリアとミートドリアです」

そんな中、私達の後ろから明るい声の樹々が笑顔を見せていた。
昼間に私が割ったお皿と同じ形の器を、樹々は笑顔で運んでいる。

・・・・・。

樹々も割ればいいのに。

「おっ、ありがとう。って君、この前の音楽祭に来てくれた茜ちゃんの友達じゃなかったっけ?髪染めたんだね」

突然の栗原先生の言葉に、樹々は緊張しながら答える。

「は、はい!茜の友達のまつか・・・間違えた、若槻樹々です!って茜の演奏、結局聴けなかったですけど」

「また来てくれる?茜ちゃんも『聴いてほしい』って思っているから」

「はい!次は是非。あと髪はいつもこんなふざけた色です」

樹々は栗原先生と春茶先生に頭を下げると私の耳元で囁いた。

「がんばってね」

私に笑顔でそう言って樹々は厨房に戻って行く。