紗季は彼女は生まれ付き心臓が弱く、入退院を繰り返す病弱な女の子だった。
背は高く、目を疑うような細すぎる腕や脚。

いつもポニーテールの髪型に、大人っぽい雰囲気。
とても笑顔が可愛らしい女の子。

そんな彼女は隣のクラスの嫌われ者を、嫌な顔を一つ浮かべずに受けていれてくれた。

それが少しだけホッとして安心して。
でも『その女の子も本当は私の事が嫌いじゃないのかな?』って思ったりもして、逆に不安になった。

優しく声を掛けてくれる彼女の笑みはどこか胸に突き刺さり、『友人や親友という言葉は、結局最後は鋭利な刃物のような凶器に変わるのではないか』と考えていた。

だから私は紗季の事が好きでも、距離を置いた。
休日に遊んだ日もあったけど、基本的に自分から紗季に声を掛けることはなかった。

毎日の記憶がリセットされるように、昨日あんなに楽しく話せたというのに。

私は紗季の事を『ただの保健室に通う知人』という事にしていた。

『友達には絶対になりたくない』と思った。
『信じて裏切られるのだけは、絶対に嫌』だったから。

こんな苦しい想い、二度としたくないから。
『今の葵と愛藍みたいな関係には絶対になりたくない』と思ったから。

そして紗季には悪いけど、嬉しいことに『楽しい』は長続きしなかった。
紗季は病状が悪化したのか、彼女は入退院を繰り返す日々。

六年生になった頃には、紗季は殆ど学校には来なかった。
結局保健室には私一人で、勉強を学んでいた。

でもこれでいい。
紗季と仲良くなったら、また誰かが嫌な思いをする。

決して『紗季が嫌い』とか、『嫌な奴』とかそういうのじゃない。
心の底から紗季の事が大好きだった。

大好きだったから、やっぱり恐かった。
友達になるのが怖かったのが当時の本音・・・・・・。

そして当時の私の考えは間違ってないと、私はその道を貫いた。

当時は本当に、誰とも関わりたくなかった。