兄のふざけた行動で、まず私は父から怒られた。
『どうして相談してくれなかったのか』って。

悔しそうに、まるで自分が会社でいじめられているように、父は苦しそうな表情を見せていた。

そんな『どうでもいい』と思っていたはずの父や兄の意外な一面に、私は父と兄に謝り倒した。
『黙っていてごめんなさい』って何度も何度も・・・・・。

そうしたら、『ふざけたこといってんじゃねえよ!お前が謝る必要なんてねえよ!』って、兄は怒って私を抱き締めてくれた記憶がある。

でも当時はその言葉がどうしても理解できなくて、私は何度も兄にから目を逸らしていた。

正直言って、今になってもその理由は分からない。
今さら聞く気にもならない。

だからその言葉は保留というメモを張り付けて、今も私の心のポケットに閉まっている。

いずれその言葉を理解できる日は来るのだろうか?
こうして、翌日から私の保健室登校が始まった。
学校に行かなくても良いと父に言われたが、私はそれを拒んだ。

理由はわからない。
今になってもわからないまま。

でも強いて言うなら、変な私のプライドがそれを拒んだのだろう。
学校は絶対に行かなきゃいけないのもだと思っていたし。

そして通うようになった保健室では、優しそうな若い女性の先生と、同じ学年の女の子に囲まれて過ごした。

いつも暖かい言葉をかけてくれる二人は、当時の冷めきった私の心を溶かしてくれた。
私も教室と違う空気に、少しずつ自分を取り戻していくことができたっけ。

同じ学年の女の子は隣のクラスの生徒だった。
名前は山村紗季(ヤマムラ サキ)。