時間は一時半を回った。
ランチ時間終了まであと三十分。

気がついた頃には店内も落ち着いて、お客さんも二組しか残っていない。

ピークタイムを終えた頃には、立つことも出来なくなるほど私達は疲れてきた。

そんな私達に城崎さんは冷蔵庫で冷やしていたコーラをグラスに注いで渡してくれた。
『それ飲んで、もう一踏ん張り頑張って』って言ってくれた。

コーラを一口飲むと弾ける炭酸と共に、自分自信が溶けていくような不思議な気分に陥った。
そういえば仕事に帰ってきた兄は、すぐに冷蔵庫を開けて缶ビールを開けている。

お兄ちゃんはいつもこんな気分なのだろうか。

帰ってきた大量の洗い物を、厨房の三人で片付ける。

一息ついたからか、体が軽く感じたような気がした。
山のように溜まった洗い物も、気が付いた頃には終わっていた。

時間に余裕が出来た私は、東雲さんと一緒に仕込みを行っていた。
慣れない包丁の扱いに、慎重に食材を扱った。

一つ一つ丁寧に教えてくれる東雲さんの言葉に、私は夢中だった。

橙磨さんは客席の片付けや城崎さんと一緒に力仕事をしていた。
夜も予約があるらしく、その準備をしている。

樹々と小緑は二人で楽しそうに話していた。
あまり見慣れないコンビだが、二人とも楽しそうだ。

仕事中ということを忘れて喋る姿に、城崎さんに『声が大きい』と怒られていた。

紗季は更衣室で横になったまま動かなかった。
『大丈夫だろうか』と顔を覗いたら、寝息をたてて寝ていた。

きっと疲れているんだろう。
今日も朝早くから小緑の勉強を見ていたと言っていた。

最近会う度に疲れた表情をよく見せる紗季は、『全然寝ていないのだろう』と、そんな事を思ってしまった。