するとそこには笑顔で料理を作る東雲さんの姿と必死に食らい付く姿の橙磨さん。
忙しさはさっきと変わらない。

そんな私に気が付いた東雲さんは私を見て優しく問い掛ける。

「もう休憩は大丈夫ですか？」

私は大きく頷くと同時に笑みを見せた。
不安を振りほどいた、

『新しい桑原茜』の笑顔。

「はい。大丈夫です。ありがとうございます」

「じゃあもう一踏ん張り、一緒に頑張りましょう」

そう言って東雲さんは私に再び指示を出してくれた。
私も先ほど同様に指示を拾って厨房内を動き回る。

何故だか体が軽く感じる。

そんな私を見た城崎さんは私の姿を見て驚いていた。
何かを言おうとしていたけど、その言葉を飲み込んで私の背中を叩いてくれた。

そして『頑張れ』と言うような城崎さんの優しい笑顔に、私は何がなんでも食らい付こうと決めた。

絶対に、私は逃げたりはしない。